A.おおよそ下記の割合となっております。(H23年ある調査機関資料より)
他の業種より、歯科・医科の診療所は、後継者の不在率が非常に高くなっております。
・平均不在率64%
・無床診療所(歯科医院以外)60%
・歯科診療所70%
A.おおよそ下記の理由があるようです。
①後継者(子息)がいない。
②第3者承継(売却)したいが相手先を探すのが難しい。
③第3者承継(売却)はできそうだが、営業権の売却価額が低い。
(理由として売上を引き継げそうにない。購入側に資金がない。融資が通らない。または融資が通っても返済期間が短いためなど)
④診療所が賃貸ではなく所有のため相続税の負担が重い。
⑤住宅兼診療所の所有権を巡って兄弟間で争いがありそうである。
⑥後継者(子息)はいるが意見があわない。
⑦後継者の年齢が低く承継できるのが10年以上先になりそうである。
⑧税金が高く貯金ができず、住宅ローン等の債務が残り引退できない。
⑨そもそも何から始めてよいかわからない。
A.おおよそ5つに分かれます。承継問題は早い段階で5つの選択肢のそれぞれの課題を洗い出し、早期に解決していく必要があります。
①医院を廃業する
1.予定をきちんと立てて廃業する場合
2.偶発的な事故・急な病気等による死亡により廃業せざるを得ない場合
②親族を含めた第3者への承継をする
3.偶発的な事故・急な病気等による死亡による親族への承継をする場合
4.偶発的な事故・急な病気等による死亡による第3者への承継をする場合
5.生前にきちんと計画を立てて、第3者または親族に承継をする場合
A.おおよそ下記の事項が考えられます。
①院長の年齢とともに売上の減少が考えられ、固定費の捻出が難しい(家賃・人件費を引き下げづらいと思われますが、家賃を交渉したり、スタッフを社員からアルバイトに変更する必要があります。)
②診療所の原状回復費用がかかることがあります。
③廃業するときまでに、リース及び借入金の残債を清算する必要があります。
④従業員の退職金が必要になることもあります。
⑤インプラント等の自由診療については、継続治療が必要なケースが多い。その場合、信用できる転医先の確保が必要です。
⑥廃院が近づくにつれて、スタッフのモチベーションや継続勤務が困難になることもあります。
⑦老後資金を蓄積する必要があります。
A.おおよそ下記の事項が考えられます。
①リース及び借入金の残債を清算する必要があります。
②継続治療が必要な方には、信用できる転医先の診療所の確保が必要です。
③残されたスタッフや家族のために、緊急時のマニュアルを生前に残すと便利です。
④自由診療で継続治療が必要な場合は、症例にもよりますが、前金にて治療費を受領している場合は患者に未治療分にかかる治療代金の返金が必要な場合もございます。(例・インプラントの治療代金(手術代金と上部構造の治療費を手術時に一括で前受けしている場合等))
⑤事務処理・患者対応から死亡後の当面の期間につき人件費等の支払が生じます。
⑥従業員の退職金が必要になることもあります。
⑦診療所の原状回復費用がかかることがあります。
A.おおよそ下記の事項が考えられます。
①(生前戦略として)生前承継として開設者、管理者の変更を行います。不動産である診療所の名義を移転できない場合は、賃貸借契約を承継者と締結いたします。また、不動産以外の医療機器等は承継者に移転いたします。
②(生前)医療法人を設立し、不動産である診療所を買い取ることも考えます。
③(生前)平成19年3月以前の医療法人をお持ちの方は、出資持分を生前に後継者へ贈与いたします。
④(死亡)後継者がご子息の場合は、相続税の負担と争続が大きなテーマとなります。
⑤(死亡)診療所を所有している場合は、後継者に遺言にて指定することを考えます。
A.おおよそ下記の事項が考えられます。
①営業権の譲渡となりますので、売上の確保・医院名の変更(個人名より一般名称の方が引継ぎ者は承継しやすくなります)・ビルの耐久性(承継後おおよそ20年は診療できる必要があります)を検討します。
②医療法人化を検討します。個人診療と比較して管理者と開設者が別となりますので、経営と医療の区別ができ選択肢が増えます。
③残されたスタッフや家族のために、緊急時のマニュアルを生前に残す必要があります。
④死亡等後、承継先が決まるまでの当面の間、家賃(オーナーと良好の関係はある場合は当面の間、家賃の減額等を交渉してみてはいかがでしょうか)は当然ながらスタッフの給与も支払う必要があります。(勤務が必要ない場合でも休業手当(通常給与の60%)を支払う必要がございます。)
⑤売却できない場合も想定されますので、治療の継続治療が必要な方には信用できる転医先の診療所の確保が必要です。
⑥売却できない場合も想定されますので、自由診療で継続治療が必要な場合は、症例にもよりますが患者に未治療分にかかる治療代金の返金が必要な場合もございます。(例・インプラントの治療代金(手術代金と上部構造の治療費を手術時に一括で前受けしている場合等))
⑦売却できない場合は、リース及び借入金の残債を清算する必要があります。
⑧売却できない場合は、スタッフに対して退職金が必要になることもあります。
⑨売却できない場合は、診療所の原状回復費用がかかることがあります。
A.おおよそ下記の事項が考えられます。
①営業権の譲渡となりますので、売上の確保・医院名の変更(個人名より一般名称の方が引継ぎ者は承継しやすくなります)・ビルの耐久性(承継後おおよそ20年は診療できる必要があります)を検討します。
②医療法人化を検討します。個人診療と比較して管理者と開設者が別となりますので、経営と医療の区別ができ選択肢が増えます。
③売却できない場合も想定されますので、治療の継続治療が必要な方には信用できる転医先の診療所の確保が必要です。
④売却できない場合も想定されますので、自由診療で継続治療が必要な場合は、症例にもよりますが患者に未治療分にかかる治療代金の返金が必要な場合もございます。(例・インプラントの治療代金(手術代金と上部構造の治療費を手術時に一括で前受けしている場合等))
⑤売却できない場合は、リース及び借入金の残債を清算する必要があります。
⑥売却できない場合は、スタッフに対して退職金が必要になることもあります。
⑦売却できない場合は、診療所の原状回復費用がかかることがあります。
A.緊急時ですので、院長の突然の死亡・事故があった場合に、残された診療所のスタッフまたは家族が路頭に迷わないように、緊急時のマニュアルを作成しておく必要がございます。特に親族の中に後継者候補が存在しない場合は、残された遺族とスタッフが中心に対応する必要があります。
1)院長の意志について
→診療所の承継(売却)または閉院かの選択を決めます。
1.閉院の場合は、転医先の確保と未治療にかかる前受け金がある場合は、自由診療の返金の用意が必要となります。
2.承継は、おおよそ死亡等後から2ヶ月から3ヶ月、長くても6ヶ月を目安に承継を完了させることを目標とします。
2)緊急時の役割について
→緊急時の対応方法をスタッフ及び家族に伝え、役割分担を決めておきます。
1.役割分担を決めます。
(診療担当・協力歯科医院への対応担当、院内事務担当・転医先への対応担当・葬儀等)
2.連絡先を記載した用紙を用意します。
(歯科医師会・協力歯科医院先、転医先・M&A業者・税理士・弁護士・その他)
3.患者への連絡についての指示をいたします。
・死亡後その先2週間~4週間の予約を電話にて全てキャンセルするようにします。
・お詫び、今後の対応については決まり次第報告する旨を伝えることとし、同内容を院内、院外に掲示いたします。
・応急処置は通常通り当医院(代診医がスタッフに在籍する場合)にて治療するか、協力歯科医院を用意し、その医院にて対応するようにします。
*緊急時の応急処置に協力していただける歯科医院を、計画を立てて用意しておく必要があります。
4.葬儀等の参列後の対応方法の指示をいたします。
・葬儀等以外は、当院にて通常の勤務時間に少なくても数名にて待機し、事務処理・電話処理など患者対応を行います。(1週間から2週間程度)
3)診療の再開について
a.廃業を選択する場合
・転医先を患者に紹介します。その際、自由診療については未治療にかかる返金についても相談します。
b.第3者への承継(売却)の場合
・承継先が決まるまで、当面(2ヶ月から6ヶ月)の間、当院(代診医がスタッフに在籍する場合または協力歯科医師に来院して頂く)または協力歯科医院で診療を行います。
・院内掲示にて院長死亡の説明及び詫び状を掲示し、今後の対応の詳細は決まり次第伝えるようにいたします。新規患者は取りません。従って、新患・相談・診断は、承継先が決定するまでは保留または協力先の診療所へ紹介いたします。
※個人診療所ですと、原則、管理者不在の状態で死亡後、第3者が診療を行うことは、事実上不可能となります。管理者不在が相当期間続く場合は管轄保健所に相談ください。
(医療法上、第3者が治療を行うことは開業を意味いたしますので、事実上不可能となります)
※法人の場合は、管理者の変更により当面の治療を行うことは可能となります。
※どちらにしても協力歯科医院が必要となります。
4)承継条件について
→下記の1~6を交渉・準備する必要があります。
1.売却金額について
・市場はないため決められた金額はございません。
・M&A業者、顧問税理士に相談し、売買価格を決めます。
2.従業員の雇用継続について
・M&A業者、顧問税理士に相談し、承継先と解雇または継続を交渉ください。
3.従業員の退職金の清算について
・M&A業者、顧問税理士に相談してください。
・解雇の場合は退職金の支払が必要となります。
4.借入金の清算について
・M&A業者、顧問税理士に相談してください。
・(個人診療の場合)原則、承継時に清算いたします。清算に必要な資金は○○生命の死亡保険金または〇〇銀行より支払うこと。
・(法人診療の場合)原則、清算する必要はございません、M&A業者、顧問税理士に相談し、承継先と交渉ください。合わせて連帯保証人を外す交渉を銀行と行ってください。
5.リース債務の清算について
・M&A業者、顧問税理士に相談してください。
・(個人診療の場合)原則、承継(売却)により清算いたします。
・(法人診療の場合)原則、清算する必要はございません。合わせて連帯保証人を外す交渉をリース会社と行ってください。
6.院内システムの承継について
・院長の万が一の際も医院のカルテ・医療器械・重要書類の管理・医院の自由診療のシステム(無料相談・診断・説明・治療の流れ・スタッフの接遇など)の説明をできるように体制をつくる必要があります。
こちらは計画を立ててスタッフに熟知してもらう必要があります。
5)承継(売却)できなかった場合について
1.転医先を患者に紹介します。その際、未治療にかかる自由診療の返金についても相談します。
2.従業員の退職金を必要な場合は支払います。
3.リース債務・借入債務の清算を行います。
A.下記の金額を用意する必要があります。
①生前の場合
・老後の生活資金
・清算費用(自由診療にかかる前受け金・退職金・原状回復費用・借入金及びリースの残債)
②死亡に伴う場合
・遺族の生活資金
・清算費用(自由診療にかかる前受け金・退職金・原状回復費用・借入金及びリースの残債)
A.法人診療所と個人診療所で清算費用(借入・リース残金等)に備えて生命保険に加入した場合の比較を説明したいと思います。法人の方がリスクを節税でカバーできることがわかると思われますが、実際に死亡保険金を受け取った場合は、法人の方が税負担が重くなります。
※前提①死亡保障3,000万
②年間保険料150万(支払金額の内、法人の経費に1/2相当額が算入可とします)
③15年後の解約返戻金2,250万
④必要な清算金2,500万
■加入後15年後に、死亡事故により死亡保険金の給付を受けた場合
①個人診療
・生命保険の加入により、毎年生命料控除を受けることによる節税が可能となります。
40,000円×0.5%(税率)×15年=300,000円(節税概算額)
・死亡保険金は相続税の対象ですが、借入債務等は債務控除できると思われますので、多くの場合で税金負担は生じないと思われます。
②法人診療
・生命保険の加入により、毎年保険料のうち一定額が経費算入になることによる節税が可能となります。
1,500,000円×1/2×0.35%(税率)×15年=3,937,500円(節税概算額)
・死亡保険金は法人税の対象となり、法人税等が発生してしまいます。
■事業承継に成功し清算費用の支払が必要なく、加入後15年後に生命保険を解約した場合
①個人診療
・生命保険の加入により、毎年生命保険控除を受けることが可能となります。
40,000円×0.5%(税率)×15年=300,000円(節税概算額)
・解約返戻金は所得税の対象ですが、解約返戻金が支払保険料を超えることはほとんどございませんので、多くの場合で税金負担は生じないと思われます。
②法人診療
・生命保険の加入により、毎年保険料のうち一定額が経費算入になることによる節税が可能となります。
1,500,000円×1/2×0.35%(税率)×15年=3,937,500円(節税概算額)
・解約返戻金を個人に移すために退職金を支払った場合は、所得税・住民税を支払う必要があります。
(22,500,000円△400,000円×15年)×1/2×0.33%△636,000円=2,086,500円(住民税含む)
(納税概算額)
・解約返戻金は法人税の対象となりますが、退職金が経費に入ります。その効果は、
22,500,000円△(22,500,000円△1,500,000円×1/2×15年)=11,250,000円
11,250,000円×0.35%(税率)=3,937,500円((節税概算額)
A.おおよそ下記のものが想定できます。
①診療所を売却いたします。
・売主側は個人診療所または医療法人となります。一方、買主側は個人診療所または既存の医療法人の分院が想定できます。ただし、医療法人の分院は都道府県の認可制となっているため買取りスケジュール等が必要になります。
②医療法人の理事長等及び社員(株主)の変更により売却いたします。
・売主が旧医療法人(認可が平成19年3月31日以前)の場合は、理事長・理事・監事・社員(医療法人でいう株主)の変更と出資持分の譲渡を行います。
・売主が新医療法人(基金拠出型医療法人)(認可が平成19年4月1日以後)の場合は、理事長・理事・監事・社員(医療法人でいう株主)の変更と基金の払い戻しを行います。
A.おおよそ下記のものが想定できます。特に①が大きいと思われます。閉院は転医先を確保するにしても患者からのクレームになることもあるからです。
①患者の引継ぎができる。
②前受けにかかる治療費の返還がなくなる。
③診療所の清算資金が少なくなる、または無くなる。
④老後資金ができる。
⑤条件によっては非常勤として継続勤務も可能となる。
A.おおよそ下記のものが想定できます。特に①が大きいと思われます。通常の開業の場合は開業してから売上の安定するまので期間は早くても6ヶ月から1年くらいの必要だからです。
①新規開業の売上等のリスクを回避でき、当初から売上が見込める
②長年蓄積された医院のシステムが承継できる
③熟練されたスタッフを引き継げる
④地域の患者評価を引き継げる
A.おおよそ下記のものが想定できます。特に①が大きいと思われます。歯科医院は院長の力量にかかるウェイトが高いところがあるからです。
①うまく売上を承継できるか不安である
②前医院のシステムをうまく引き継げるか
③前経営者と比較されないか
④紹介患者も承継できるか
⑤患者が、院長が変わってどう感じるか
⑥スタッフから信頼を得ることができるか
⑦簿外債務や過去の治療の瑕疵によるクレームがないか
⑧売却金額の算定根拠が不明
⑨前院長の治療方針を初め、過去の治療経緯など承継につき不安に感じる。
項目 |
個人診療の場合 |
医療法人の場合 |
着目点 |
---|---|---|---|
管理者死亡後の診療所の再開 |
開業手続後の開始は可能 |
役職の変更で対応可 |
死亡後、譲渡するまでの当面の間、個人診療では事実上診療不可 |
病気や怪我等による当面の診療所での診療 |
長期の場合は休業又は廃業 |
役職の変更で対応可 |
個人診療の場合、長期の休業は再開時に売上が元に戻らない事も・法人は勤務医を管理者にすることが可能なため継続可能 |
院長(管理者)を継続したままでの譲渡(管理者以外の第3者) |
不可 |
可能 |
法人の場合は、勤務医を管理者にしたまま当該勤務医又は第3者に承継可能 |
承継時の管理者の変更 |
廃業と開業を意味する |
役職の変更で対応可 |
個人診療は事務が複雑(賃貸借契約を再度締結する必要等あり) |
管理者の死亡 |
廃業を意味する |
役職の変更で対応可 |
|
承継後の給与収入 |
原則なし |
給与あり |
法人の場合、承継後も理事として残り給与の支給を受けることは可能 |
承継時のリース契約 |
原則清算する必要あり |
引き継ぎ可能 |
債務者が法人の為(連帯保証人の変更は交渉する必要あり) |
承継時の借入金 |
原則清算する必要あり |
引き継ぎ可能 |
債務者が法人の為(連帯保証人の変更は交渉する必要あり) |
承継後の賃貸借契約 |
再度締結 |
継続 |
個人診療の場合はオーナーの承諾が得られない可能性あり |
承継時の従業員 |
原則解雇 |
継続 |
個人診療は原則、退職金の清算の必要あり |
項目 |
個人診療の場合 |
医療法人の場合 |
着目点 |
---|---|---|---|
税金 |
所得税・住民税・事業税 |
法人税・住民税・事業税 |
個人は最大55%・法人は40%くらい |
生命保険 |
年間12万円の所得控除 |
一定の定期保険は経費化可能 |
法人の場合はリスクを節税で補填可 |
税金の特典 |
青色申告特別控除65万 |
給与所得控除として最大245万 |
|
相続税 |
他の財産と合わせて課税 |
医療法人としての資産はかからない |
新医療法人のみ相続税なし(解散時に没収の為) |
承継時の税金 |
営業権による譲渡 |
旧医療法人であれば出資持分の譲渡が可能・新医療法人は基金以外の部分は退職金課税など対応 |
法人診療所の売却の場合は利益の40%が税金 |
院長(事業主)への退職金 |
支給できない |
支給できる |
老後の資金・住宅ローンの返済 |
同居する家族への給与 |
妥当金額のみ |
支給できる |
個人診療の場合より高い金額の支給可 |
同居する家族への退職金 |
支給できない |
支給できる |
老後の資金 |
開業申請 |
届出 |
認可制 |
医療法人の認可は年2回のみ |
厚生年金 |
5人以上(院長は不可) |
院長も含め常勤者 |
人件費の約8%の負担 |
健康保険 |
5人以上(院長は不可) |
院長も含め常勤者 |
人件費の約5%の負担 |
歯科医師国保 |
加入可 |
加入可 |
法人の場合は個人時代から加入している場合のみ可能 |
■事例1 診療所を所有している場合で遺産分割がまとまらない場合
診療所の所有者及び管理者が父親のケースで診療所の遺産分割がまとまらない場合は、相続開始後の事業承継が難しくなります。個人診療の場合は死亡に伴う管理者の変更は開業を意味いたしますので、開業届けに診療所を所有している場合は登記簿謄本を、そうでない場合は賃貸借契約書を添付する必要がございます。そのため遺産分割がまとまらない場合は、所有者全員=共同相続人全員の承諾を得ていることがわかる書類が必要になるかと思います。
原則としては、相続人全員と賃貸借契約を締結する必要がございますが、各々の相続人の承諾書という形でも認める保健所もあるようです。
対処方法としては
①診療所を承継者である子に指定した遺言書の作成をいたします。
②生前に管理者を変更し、診療所につき父と子の間で賃貸借契約(父死亡後も家賃の金額等の条件は変わる可能性もありますが賃貸借契約は継続できます)を締結する。
③医療法人を設立し、診療所を医療法人が買い取る形をとります。
■事例2 相続税の負担が大きく承継が難しい場合
まず相続税の負担額の試算をする必要があります。節税の代表例としては、小規模宅地等の軽減の利用と医療法人による診療所の買取り、出資持分の承継者への贈与があげられます。
①診療所の承継で相続税の節税の代表例で小規模宅地等の特例
この特例が、原則相続税の申告期限までに遺産分割協議を成立させる必要がございます。
下記が内容の概要となっております
(特定事業用宅地等)
a. 相続後、承継者が診療所を相続し診療所を承継すれば400㎡までの宅地については80%の評価を下げることができます。
b. 生前に、承継者に管理者を変更し、診療所を相続すれば400㎡までの宅地については80%の評価を下げることができます。(この場合、承継者は宅地の所有者と生計を一(原則同居)にしていないとこの特例は受けられません)
(特定同族会社事業用宅地等)
a.対象は旧医療法人(平成19年3月以前設立)のみとなりますが、医療法人に宅地のみ賃貸するか、診療所(宅地及び建物)を賃貸し、承継者が宅地または診療所を相続した場合は400㎡までの宅地については80%の評価を下げることができます。
②医療法人による診療所の買取り
個人診療所では診療所(不動産産)は当然として診療所の拡大・長期の営業努力による内部留保、言い換えれば預貯金等に対して相続税を負担する必要があります。相続税は毎年増加していくことに繋がります。一方、新医療法人(基金拠出型医療法人)は、設立時の基金は債権と考えられ、医院の業績とは関係なく券面額のみを相続税の対象となりますので、相続税の負担を最小限に抑えることができます。つまり、以前の医療法人にように内部留保を通じた出資持分の価値増加に伴う相続税の負担がございません。従いまして法人診療所の拡大や長年の営業によって相続税は毎年増加していくことは一切ないことになります。このように新医療法人は持分の定めがないこと、医院閉鎖時(解散時)の残余財産の国等への帰属、内部留保に伴う相続税の負担がないことが特徴となります。
事業承継を確実にしていく意志のある個人診療所は、法人形態にすることにより相続税の心配なしに継続して医院経営を行うことができると思われます。
また、個人名義の診療所を医療法人が買い取った場合、買取後の地価の上昇に伴う相続の増額等の心配は必要なくなります。(もっとも診療所の旧所有者は不動産から現金に変わりますので、その現金が相続時までに貯蓄されている場合は、その現金に対しては、相続税はかかってしまいます。)
③医療法人の出資持分の価額が上昇して相続税の負担が重い場合
平成19年3月以前に設立された医療法人は出資持分があり、診療所の拡大や長年の営業によって出資持分の価額は上昇し、相続税は毎年増加していくことにつながります。(一方、平成19年4月以降設立の持分の定めのない医療法人(以下新医療法人)は、持分の定めがないこと、医院閉鎖時(解散時)の残余財産の国等への帰属が大きな特徴で、診療所の拡大や長年の営業によって出資持分の価額は上昇し、相続税が毎年増加していくことはありません。
この出資持分のある医療法人を新医療法人への変更は可能ですが、理事の親族の占める割合、理事報酬の占める割合等、規模の規定、自由診療収入の割合を満たさない限り、莫大な贈与税が個人とみなされた医療法人の負担となり移行はかなり難しいと思われます。
その為、理事長の退任時に退職金を支払い、出資持分の評価を大幅に下げて後継者に譲渡いたします。この方式をとっても多大な贈与税が算出される場合は、相続時精算課税制度を利用し贈与税の圧縮をはかります。
※相続時精算課税制度の概要
贈与者の年齢が65歳以上の場合、相続人に対する贈与税については2500万円を超えた金額の20%の納税で可能となります。
■事例3 承継者(ご子息)と承継問題を話す機会が少なく些細なことから承継問題に失敗した場合
医科・歯科に問わず、医術の教授をうける年代の相違・大学の相違・教授の相違・卒業後の臨床医院の相違から親子といえども意見の相違が顕著になることもありえます。親の気持ちもなかなか伝わらないことも多々あると思われます。
顕著な意見の相違がないにもかかわらず承継の話をなかなか切り出せないこともありえます。その際に医療法人の設立を機にきちんと親子で話し合うのもよいかもしれません。
医療法人とは、まさしく事業承継であり、理事の決定・社員の決定でもありますので、同じ診療所に勤務していないにしても将来の事業承継のことや医院経営の話し合いの場になることは間違いないと思われます。
■事例4 不幸な事故等により承継者(ご子息)が大学に入ったばかりで承継に失敗した場合
個人診療所では管理者の死亡は医院の廃業となります。そのため承継者がいるにもかかわらず、不運な事故等による場合は廃業となり、承継に失敗することもありえます。こういった事例に対応するために医療法人であれば、管理者の変更を行うことによって承継者が大学等を卒業するまでの当面の診療所での治療の継続が可能となります。
■事例1 死亡後1年後に売買契約が成立した場合
個人診療所では管理者が死亡した場合、第3者承継を考える場合、診療所では承継者が決まるまで当面の治療を行うことができません。この事例では承継者が決まったのが死亡後1年を経過した後であったため売上の見込みが立たず、売却金額はかなり低い金額となってしまいました。
この事例に対しては医療法人を設立し、管理者が死亡された場合は、第3者の承継者が決まるまでの当面の間は勤務医を管理者にすることにより診療の中断を防げますので、売上の見込みが立ち、売買金額の劣化を防げます。
■事例2 大きな事故等により休業後、2年後に売買契約が成立した場合
個人診療所では管理者が怪我等した場合、長期にわたる場合は休業か廃業を選択することになります。怪我等の完治後、診療を再開する場合でも休業期間が長期にわたる場合は、売上の見込みが立たないことも考えられます。また不運にも怪我等の状況により再開出来ない場合は第3者承継を考える必要があります。そのため休診期間が長期に及ぶと売上の見込みがたたず、第3者承継が難しくなることもありえます。
このように個人の診療所では管理者の長期の不在等の場合は治療の継続ができません。一方、医療法人の場合は、怪我等の完治するまので間、管理者を変更することにより、診療の中断を防ぐことができます。
■事例3 売買契約が成立したものの買主の一方的な都合でキャンセルされた場合
売買契約の成立後、引渡しまでに売主・買主の都合により契約を破棄した場合は、違約金を徴収できる事項を契約書に載せていたら防げた事例かもしれません。
違約金の金額ですが最低500万または売買金額の30%といった割合をいれたほうが無難と思われます。
■事例4 売買契約が成立したものの買主の資金的な理由(融資の不成立)でキャンセルした場合で、違約金の支払で買主ともめた場合
もちろん契約日までに、銀行に融資について前もって承諾を得るのが通常ですが、なんらかの事情により承諾が解除になることも稀にあります。そのため売買契約の成立後、引渡しまでに売主・買主の都合により契約を破棄した場合の違約金を徴収できる事項の例外規定を設ける必要があります。下記の事項を載せると良いかもしれません。
① 甲または乙の死亡
② 甲または乙の突発的な事故による重負傷
③ 火災や地震等の自然災害による当該建築物の崩壊
④ 乙の融資の不成立
⑤ ①から④に類する事項
■事例5 診療所の売買で承継時から社会保険診療の請求ができなかった場合
診療所の買取りは、売主側の廃業届け、買主側の開業届けとなります。そのため社会保険の認定医の申請上、引継ぎ月から社会保険の請求を申請できなくなる可能性もあります。そのためスケジュール等を調整したり、新しい管理者が6ヶ月前から勤務医等としての登録をすることや、旧管理者が非常勤にて勤務することなど、訴求願いをできる体制をつくることも管轄の保健所と前もった打合せが重要となります。
■事例6 承継先のビルに耐久性の不安があり第3者承継に失敗した場合
業績も良くスタッフの教育もすばらしい診療所であっても、診療を行うビルの耐久性に問題があった場合は、なかなか承継がうまくいかないこともありえます。
診療所の立地は業績にかなりの影響を与えます。そのため承継側はできれば10年から20年はその診療所で経営を継続する算段にて買取り等を考えると思われます。そのため承継後においても20年前後は継続できるビル等が望ましいと思われます。
■事例7 承継先の診療所の名称の問題で第3者承継に失敗した場合
承継側の不安要素の大部分は旧診療所の売上等を引き継げるかにあります。そのため医院の名称が旧院長の苗字であることが承継側にとってデメリットとなることもありえます。承継後の患者が、承継後の診療所の名称変更後にどういった印象をお持ちになるでしょか?その点を承継側が心配した事例です。
承継問題で既存の診療所名を変更することはとても勇気のいることと思われます。苗字であるがために患者からの信頼が高いということもありえるからです。しかし、だからこそ承継側も逆に不安に感じる要素であることを理解する必要があるかもしれません。少なくても承継の前2年から3年前には名称変更を考えたほうがよいかもしれません。
①経営権譲渡に関する覚書の締結(譲渡対価の決定・支払い方法等の決定)
②出資持分の譲渡契約締結
③新社員の入社及び今までの社員の退社の承認に関する臨時社員総会開催
④旧理事・監事の退任に伴う新理事及び新監事選任に関する臨時社員総会開催
⑤旧理事長の退任に伴う新理事長選任に関する理事会開催
⑥出資持分の譲渡
A.おおよそ下記の事項を記載いたします。
藤井和哉(以下甲という。)とA(以下乙という。)は、医療法人社団藤井会(以下丙という。)の経営権の譲渡についてこの覚書を作成し、次の諸項目について合意する。
(取引の内容)
1 甲は、丙(所在:東京都千代田区神田神保町1-40)の経営権を乙に譲渡することを約し、乙はこれを譲り受けるものとする。
(出資持分の譲渡の形態)
2 丙の経営権を譲渡するため、次の取引を行う。
丙の出資持分については、甲がその責任において、出資持分譲渡の日までに乙に譲渡するものとする。
甲と乙は、丙の経営権譲渡に関する法形式等を検討のうえ、その都度、必要な手続を行うものとする。また、丙所有の財産並びに許認可届出書類、帳簿書類、印鑑など経営に必要な一切の引継ぎは出資持分の譲渡の日に行う。
(出資持分の譲渡の日)
3 2に定める出資持分の譲渡日は平成 年 月 日とする。
(経営権対価)
4 1に基づく経営権の対価は、平成 年 月 日現在の丙の試算表(別添)を前提として定めるものとする。なお、
平成 年 月 日までの試算表数値の主要な変動(合理的に予測される将来の変動を含む。)は、これを経営権の対価算定に加味するものとする。最終的な経営権の対価については双方協議のうえ、平成 年 月 日を目途として定めるものとする。
(従業員)
5 丙の医師、歯科衛生士、事務職員その他従業員については、原則として現行の職員・労働条件等を継続するものとする。
(守秘義務)
6 乙は調査により知り得た事柄について守秘義務を負い、故意に又は不用意に第三者に対して情報漏洩を行った場合、乙は損害賠償義務を行う。なお、取引不成立時には甲及び丙の提供したすべての資料を返還するものとする。
(善管注意義務)
7 本覚書取り交わし以後、1の取引が完了するまでの間、甲は従前通り善良なる管理者としての義務を負う。
(丙の債務等に係る契約)
8 将来、丙が税務上の更正処分等を受けて納税義務その他の債務を負担することとなった場合、簿外の債務の存在が明らかになった場合、その原因が平成 年 月 日以前に存するときは、甲はその支払義務を負う。
また、平成 年 月 日時点における引継資産に架空資産があることが事後に判明した場合、甲が同額の補填を行うものとする。
(損害賠償金)
9 甲及び乙は相手側が正当な事由を有することなく、この契約を解除した場合については、第4条の金額の20%相当額である 円を損害賠償金として請求することができる。
ここで言う正当な事由とは、下記のことを言う。
①甲または乙の死亡②甲または乙の突発的な事故による重負傷③火災や地震等の自然災害による当該建築物の崩壊④乙による融資の不成立による場合⑤①から④に類する事項
(その他)
10 この覚書に記載のない事項については、甲乙協議のうえ取り決めるものとする。
平成 年 月 日
甲(住所)東京都千代田区神田神保町1-40
(氏名)藤井和哉
乙(住所)
(氏名)
A.おおよそ下記の事項を記載した社員総会議事録を作成いたします。
臨時社員総会議事録
日時 平成 年 月 日 午前11時00分~午前11時30分
場所 医療法人社団藤井会
出席者 藤井和哉他2名
(本法人社員総数3名のうち3名出席)
本社団定款第23条第1項により理事長藤井和哉が議長となり、定款第24条に定める定足数に達したことを確認した後、午前11時00分開会を宣し、議事に入った。
記
第1号議案理事選任の件
議長は、理事藤井和哉が辞任したため後任の理事を選任する必要がある旨を述べ、選挙を行った結果、後任の理事として下記の者が選任された。
理事A
第2号議案社員の入社ならびに退社の件
議長は、下記の者より、入社の申し出と退社の申し出があったことを説明し、議場に諮ったところ、下記原案通り満場異議なく承認された。
入社する社員A
退社する社員藤井和哉他2名
第3号議案出資持分の譲渡の件
議長は、下記の出資持分の譲渡の申し出があったことを説明し、議場に諮ったところ、下記原案通り異議なく承認された。
1譲渡人 藤井和哉
2譲渡する出資持分の金額 円
3譲受人 A
議長は、以上をもって本日の議案すべてが終了した旨を述べ、午前11時30分閉会した。上記の決議を明確にするため、この議事録をつくり、出席社員が次に記名押印する。
平成 年 月 日
医療法人社団藤井会臨時社員総会
議長 藤井和哉 印
社員 印
社員 印
A.おおよそ下記の事項を記載した理事会議事録を作成いたします。
臨時理事会議事録
日時 平成 年 月 日 午後1時00分~午後1時30分
場所
出席者 藤井和哉他2名
理事総数3名の全てが出席し、平成 年 月 日 午後1時00分より理事会を開催した。当理事会において下記議案につき可決確定した。
記
第1号議案理事長改選の件
理事Aは選ばれて議長となり、理事長藤井和哉の辞任の申し出があったため、後任の理事長を選任する必要がある旨を述べ、選挙の結果、全員一致をもって次のとおり選任した。なお、被選任者はこの就任を承諾した。
理事長A
議長は、以上をもって本日の議案全てが終了した旨を述べ、午後1時30分閉会した。上記の決議を明確にするため、この議事録をつくり、出席社員が次に記名押印する。
平成 年 月 日
医療法人社団藤井会臨時理事会
議長 理事長 藤井和哉 印
理事 印
理事 印
A.おおよそ下記の事項を記載した出資持分譲渡契約書を作成いたします。
医療法人社団藤井会出資持分譲渡契約書
譲渡人藤井和哉(以下甲とする。)と譲受人A(以下乙とする。)とは、下記要領にて医療法人社団藤井会(所在:東京都千代田区神田神保町1-40)の出資持分を売買することに同意した。
記
1 種目 医療法人社団藤井会
2 出資持分の金額 円
3 譲渡価格 金 円
4 受 渡 日 平成 年 月 日
5 受渡条件 甲が乙に出資持分を引き渡すと同時に、乙は全額を支払うものとする。
上記契約成立の証として、本契約書二通を作成し、甲乙各自記名押印のうえ各々一通を保有する。
平成 年 月 日
甲(住所)東京都千代田区神田神保町1-40
(氏名) 藤井和哉 印
乙(住所)
(名称) 印
A.下記のようになっております。
①譲渡側の税務
前理事長の退任して出資持分の払い戻しを受けた後、新理事長が同額を出資すべきという考えもあるようです。この場合は出資額を超えた金額は配当扱いとなり最大で50%の所得税等がかかってしまいます。しかし、過去の判例でも定款に反しない限り社員間の出資持分の譲渡は可能とあり、実務的にも多く行われている現実から鑑みれば、有価証券の譲渡として出資を超えた金額に対して所得税15%、住民税5%の合計20%の納税で可能です。
有価証券の譲渡としての扱いですので、不運にも上場株式の含み損のお持ちの方は合わせて売却すれば相殺も可能となります。
②購入側の税務・融資
購入側は、出資持分の購入となります。税務的には医療法人の経費にも個人の所得にかかる経費にもなりません。将来、第3者等に譲渡する場合に購入金額を譲渡代金から控除できます。
出資持分は原則、個人(医療法で明確に個人と指定しておりませんが、都道府県に指導要綱のようです)が購入することになりますので、その資金を融資で調達したとしても利息は経費に入りません。そもそも出資持分を融資で調達するのは現実的には難しいと思われます。(融資がなかなか下りないことが第一の理由です)
したがって出資持分の購入は自己資金により調達するか、それが無理な場合は、その代償に医療法人にて新規に融資を受け、旧理事長に退職金を支払い、出資持分の譲渡代金を引き下げる方法等をとる必要があります。
A.おおよそ下記の事項を記載した事業譲渡契約書を作成いたします。
事業譲渡契約書
譲渡人 藤井和哉(以下、「甲」という)と
譲受人 (以下、「乙」という)は、甲が経営する「藤井歯科医院」の事業譲渡について、次の通り契約を締結する
(事業の譲渡)
第1条 甲は、乙に対し、藤井歯科医院の事業を譲渡し、乙はこれを譲り受ける。
(事業譲渡に含む資産)
第2条 事業譲渡に含む資産は、別紙目録記載のとおりとする。(譲渡時の現況資産によります)
(労働契約)
第3条 1.甲と乙は、乙において、甲が従業員との間で締結した労働契約を一切承継しないことを確認する。
2.甲は、藤井歯科医院において雇用していた全従業員を平成 年 月 日で解雇し、乙は上記従業員の中から任意のものを同年 月 日付で新規に雇用する。
(事業譲渡代金)
第4条 乙は甲に対し、本事業譲渡の代金として 円(消費税込み)を 日までに支払うものとする
(賃貸借契約)
第5条 甲と乙は、本事業譲渡に伴って、甲の歯科医院にかかる建物賃借権を乙に譲渡する。また、建物所有者の承諾を得たことを確認する。
(債権債務の処理)
第6条 藤井歯科医院にかかる未収入金その他の債権及び未払い金、預かり金その他の債務は、すべて甲において清算するものとし、乙はこれらの債権債務は一切承継しない。
(治療中及び治療済み患者への対応)
第7条 甲が藤井歯科医院において、治療中及び治療済みの患者に対して約束した、瑕疵修補及び損害賠償その他の債務にていては、甲の責任と負担で処理し、乙はこれらの債務及び責任を一切承継しない。
(競業避止)
第8条 甲は、本契約締結から2年間、藤井歯科医院から半径2km以内で、歯科医院の経営に関与しないことを確約する。
(事業の引渡し)
第9条 本事業の引渡しは、平成 年 月 日とする。
(守秘義務)
第10条 甲及び乙は、本件事業譲渡契約から得られた相手方の情報を秘密として保持し、相手方の文書による承諾なくして、第3者に漏えいしない。また、患者の個人情報については、個人情報保護法等関係法令に則り、厳格に対応する。
(債務等に係る契約)
第11条 将来、乙が税務上の更正処分等を受けて納税義務その他の債務を負担することとなった場合、簿外の債務の存在が明らかになった場合、その原因が平成 年 月 日以前に存するときは、甲はその支払義務を負う。
また、平成 年 月 日時点における引継資産に架空資産があることが事後に判明した場合、甲が同額の補填を行うものとする。
(損害賠償金)
第12条 甲及び乙は相手側が正当な事由を有することなく、この契約を解除した場合については、第4条の金額の20%相当額である円を損害賠償金として請求することができる。ここで言う正当な事由とは、下記のことを言う。
①甲または乙の死亡②甲または乙の突発的な事故による重負傷③火災や地震等の自然災害による当該建築物の崩壊④乙による融資の不成立による場合⑤①から④に類する事項
(その他)
第13条 本件事業譲渡契約の成立を証して、本書2通を作成し、譲渡人及び譲受人記名押印のうえ、各1通を保有する。
平成 年 月 日
住所 東京都千代田神田神保町1-40
甲( 譲渡人 )氏名 藤井和哉 印
住所
乙( 譲受人 )氏名 印
A.売却側と購入側の税金は下記のようになっております。
①売却側の税務
個人診療所が売却する場合は、ユニット等の医療機器、超過収益力があるなど営業権については譲渡所得となり、また5年以上の所有であれば利益の1/2となります。
法人診療所が売却する場合は、譲渡益に対して他の利益と合算して法人税がかかります。
②購入側の税務・融資
個人診療所及び法人診療所も同じ扱いになります。営業権は、5年間で経費に入ります。医療機器ですと中古資産になりおそらく耐用年数は2年程度になるでしょうか。
また医療法人・個人診療所とも売却代金を融資で調達した場合は、借入利息は経費に入ります。
診療所の購入資金についてですが営業権に相当する金額については通常、設備資金としてではなく、運転資金として融資を受けることになりますので担保等がある場合を除いて返済期間は5年から7年くらいになると思われます。
A.ケースバイケースですが、金額については資産の帳簿価額+月の売上の2ヶ月から6ヶ月分程度を目安に考えればよいでしょうか。
A.おおよそ下記のものになります。
①カルテの引継ぎは可能か。患者名簿は引き継げるか。(レセプトの使い方からデーターの移行の可否など)
②医院のシステム(診断・治療・説明・スタッフの接遇等)を引き継げる体制があるか。(旧院長のバックアップが必要です)
③旧院長からの引継ぎ期間はあるか。
④個人診療所を買い取る場合、承継月から保険請求は可能か。(社会保険の認定医の申請の手続き上、原則新しい管理者が6ヶ月前から勤務医か、旧管理者が非常勤にて勤務しない限り、1ヶ月間保険請求できなくなります)
⑤承継時の案内状に前院長の氏名を記載できるか。
⑥なぜ売却するのか。その理由は?(病気・死亡・高齢化・移転、医療法人の場合の院長の退職・ 業績不振など理由を確認します)
⑦診療所の賃貸借契約につき大家の了解は得られるか。家賃の金額は同額か。保証金は必要か。契約期間は?
⑧確定申告書の3年分のコピーを入手できるか。(税務資料を確認することで売上等の確認を行います。)
⑨総勘定元帳の開示は可能か。(税務資料を確認することで売上等の確認を行います。)
⑩3年分の社会保険・国民健康保険の支払調書を入手できるか。(支払調書を確認することで社会保険診療収入の確認を行います。)
⑪労働者名簿・給与台帳の開示は可能か。(履歴や給与水準等の確認をします)
⑫償却資産の申告書の3年分のコピーを入手できるか。(申告書を確認することで診療所内にある資産の確認を行います。)
⑬内装やユニットなどの医療機器はそのまま使えるか。
⑭リースの契約書・借入金の返済表のコピーの開示は可能か。
⑮従業員の継続勤務は可能か。
⑯簿外の負債があった場合は、必ず前医院の責任の下返済するようにする。
⑰開業届け・開設許可申請書の開示は可能か。
⑱医療法人の定款・社員総会議事録・取締役議事録の開示は可能か。
⑲売却側の税理士等への面会等は可能か。(特に買取り資金を融資で調達する場合は売却側の税理士等の協力が必要です。)