A.自分で築いた財産ならもちろんご本人は把握しておられると思います。しかし、相続時にその財産を売却などして金銭に換算した場合にいくらになるのか、相続時にいくら課税される財産なのかといったことまで把握しているかたはごくごく少数かと思われます。特に遺言で財産の分配を記載する場合はそれぞれの評価額を知った上で分配しないと、後々トラブルの元にもなりかねません。そのために、財産リストを作成することをお勧めしております。このリストがあれば、いざ相続が発生した段階でも残されたご家族にとって貴重な資料となります。
一般に財産リストを作成しなかった場合、以下のようなトラブルが生じることがあります。
①銀行預金の通帳がない、又は銀行預金がどこにあるかわからない
②銀行預金の銀行印がない、又はわからない
③生命保険の保険証券がない、有価証券の株式がない
④不動産の権利書がない、ゴルフ会員権がない
⑤貸し金庫の鍵がない又は貸し金庫の場所がわからない
当然ですが相続が発生すると言うことは、当の本人はもういません。財産を唯一管理していた本人はもういないのです。
相続後10ヶ月以内に遺産分割協議をし、そして相続税の申告をします。10ヶ月というのは非常に短いです。この短い期間しかないのに通帳や保険証券、株券等が無いということでは、当然ながら10ヶ月では足りません
また財産の存在を知らない場合ですが、税務調査等で発見された場合は申告もれになってしまいます。そうすると、相続人としては財産の存在を知らなかっただけかも知れませんが、税務署は隠していたと思う可能性も十分あります。隠していたと思われても証拠が無いことなので仕方がありません。仮に隠していたということになると重加算税が課税されます。また隠していた財産については配偶者がその隠していた財産を相続しても配偶者の相続税の軽減は使えません。本当に踏んだりけったりです。
【財産リストはできるだけ早めに・正確に作成しましょう。遺産分割協議書や遺言だけでは名義変更できません】
遺言や遺産分割協議書があれば名義は変更できると思っているかたが多くいらっしゃいますが、通帳や株券、権利書がないと名義は変更できません。もちろん再発行はできますが、思った以上に時間がかかります。
【下記のような財産リストをつくりましょう】
残された相続人は財産のすべてを把握していることは稀です。そのため下記のような財産リストを作成すると相続人は非常に助かります。
資産を持った親の最後の責任として財産リストを作成しておきましょう。
項目 |
保管場所 |
使用印鑑 |
備考 |
○○銀行/○○支店 |
勉強机の中 |
㊞ |
|
○○銀行/○○支店 |
勉強机の中 |
㊞ |
|
○○銀行/○○支店 |
勉強机の中 |
㊞ |
|
○○銀行/○○支店 |
勉強机の中 |
㊞ |
|
○○郵便局 |
勉強机の中 |
㊞ |
|
○○株 |
○○証券会社 |
||
○○株 |
○○証券会社 |
||
土地の権利書 |
○○銀行の貸し金庫 |
○○区○○町 |
|
土地の権利書 |
○○銀行の貸し金庫 |
○○区○○町 |
|
土地の権利書 |
○○銀行の貸し金庫 |
○○区○○町 |
|
家屋の権利書 |
○○銀行の貸し金庫 |
○○区○○町 |
|
ゴルフ会員権 |
○○銀行の貸し金庫 |
○○ゴルフ場 |
|
金 |
○○銀行の貸し金庫 |
580グラム |
|
○○保険の保険証券 |
勉強机の中 |
A.相続税のご相談で以下のようなご質問を受けることが多いので、相続された方が勘違いしやすい点をまとめてみました。
1.財産を相続すると必ず相続税がかかる。
相続税のご相談に応じていると「このたび祖父がなくなりまして、私は預金を1000万円も相続しました。税金はいくらくらいになりますか?」こんな質問があとをたちません。
このお客様は、おそらく贈与税と勘違いされていたのでしょう。
贈与税は110万円を超えると10%から55%の贈与税を払う必要があります。そのため1000万円も相続するとたくさんの税金がかかると思ったのでしょう。
ここでもう一度おさらいですが下記の場合は相続税がかかりません。
①相続する財産の合計が3000万+法定相続人の数×600万以下の場合、相続税は発生しません。
②相続する財産の合計が3000万+法定相続人の数×600万を超えても1億6000万以下で配偶者がすべて相続すれば相続税は発生しません。
2.実際に相続する財産が3000万+600万×相続人の数以下の金額であれば相続税はかかりません。
相続税の相談に応じていると「このたび祖父がなくなりまして、私は預金を6000万円、兄が3000万円相続しました。でも、相続人が2人ですから相続税の基礎控除の4200万(3000万+600万×2人)以下だから2人とも税金はかからないと思うのですが?」こんな質問があとをたちません。
このお客さんは、おそらく相続税の基礎控除が、相続人ごとに、各人ごとに使えると思っているのでしょう。しかし、相続税の基礎控除は、相続人全員で3000万+600万×法定相続人の数です。この例でいうとそれぞれ4200万でなく、相続人2人で4200万です。したがってこの例でいうと相続税はかかります。(既に配偶者がおりませんので、配偶者の相続税の軽減は使えません)
3.配偶者の相続税の軽減を使うと相続税がかからないので相続税の申告は必要ない?
相続税の相談に応じていると「このたび父がなくなりまして、私は財産を一切相続しませんでした。母が8000万相続しました。相続人が2人ですから相続税の基礎控除の4,200万(3,000万+600万×2人)以上ですが、相続税の配偶者の軽減を使えば相続税はなしですよね。だからうちは相続税の申告は必要ないですよね」こんな質問もあとをたちません。
このかたは、おそらく配偶者の相続税の軽減に、申告要件があることを知らないと思われます。この規定は申告をしてはじめて認められます。つまり申告をしないとこの規定を使えないのです。
4.小規模宅地等の評価減の適用を受けると相続税がかからないので相続税の申告が必要ないのでは?
相続税の相談に応じていると「このたび母が亡くなりました。母の財産は家とその敷地が主な財産です。相続人は姉と妹である私の2人です。同居していた私が住宅を相続することになりました。50坪くらいある土地と築25年の古い家ですが、このあたりの土地は坪200万くらいするそうです。しかし、小規模宅地等の評価減の特例により70坪くらいまでの土地(正確には240㎡まで)は8割減の評価減でできると知人から聞きましたのでほっとしております。」おそらくこのかたは下記のように考えたのでしょう。
①1坪200万が50坪で土地の評価は1億円と計算
②小規模宅地等の評価減の特例を使い、1億×80%を1億円から控除し、
2000万と計算
③老朽化した家と残りの財産が数百万であるから、土地の2000万と残りの財産の数百万で相続人が2人である場合の基礎控除(3.000万+600万×2人=4,200万)以下であると計算
上記①から③はすべて正解です。ただ、こちらも相続税の申告期限までに遺産分割を終了し、相続税の申告をして始めて小規模宅地等の評価減の特例を受けることができる点に留意が必要です。
A.私たち税理士事務所に相続税の節税に相談に来るかたは非常に多く、内容も「なにか相続税を支払わなくてすむ方法はありませんか?」「相続税を大幅に下げたい」などさまざまです。
私たち税理士事務所は相続税の節税だけではなく全般的な会社の経営についてもアドバイスをしております。その際にいつもお話しさせていただくのは「まず足元を見ましょう」ということです。その意味は、まずはできることからすぐに始めることです。これは相続税の節税対策にも当然言えます。
下記は比較的行いやすい相続税の節税対策の一例です。困ったらまず下記のことを考えてみてください。
① 相続人に毎年現金を贈与しましょう。
(実行例)
相続人である子供3人
15年間、毎年150万円を贈与
1年間の贈与税 (1,500,000△1,100,000)×10%=40,000
15年間の贈与税 40,000×3人分×15年間=1,800,000
15年間の資金の移転額 1,500,000×3人分×15年間=67,500,000
相続税の減額 67,500,000×相続税の税率
税率は相続財産の額に応じて10%から55%です。つまり最低の10%であったとしても67,500,000円の10%で相続税は675万円ですから、贈与を利用すると15年間の贈与税の合計の180万円で済むことからかなりの節税といえます。15年間で7000万近く相続人に移転できます。この対策は、早くはじめれば始めるほど効果はでます。注意すべきことは、相続開始3年以内の贈与を相続税の課税価格に加算されてしまいます。そのため、父親の若いうちに実行しましょう。
② 生命保険の利用
生命保険の非課税枠である500万×法定相続人の数という特例を知っているかたは多いと思われます。しかし、相続税を支払うかたでこの非課税枠のすべてを使っているかたはあまりいらっしゃいません。おそらく保険という商品を理解していないことからもこのような結果になるのではないでしょうか。ご自宅にある保険証券を一度見てください。保険の種類、保険金額、保険期間がすぐわかるでしょうか?保険の種類は、定期保険、養老保険、終身保険のどれでしょうか。保険期間は定期保険や養老保険では一定の期間のみの保証になっているはずです。相続税の非課税枠を利用するために保険を使うのなら、終身保険に最低、非課税枠と同額以上の死亡保険金で加入する必要があります。もう一度ご自宅にある保険証券を確認してみてください。
③贈与税の非課税規定を利用する
同居している家族の生活費を負担しましょう。贈与税の非課税規定の扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てられるために贈与を受けたもののうち通常必要と認められるものは非課税です。
同居している父から子、祖父から孫への生活資金などは非課税です。
例えば、祖父と同居している家族を例に説明します。
祖父から見ると子供や孫の生活費、学費を負担しても贈与税は非課税です。当然、生活費ではなくて月に何百万もあげるようでは生活費の負担とはいえません。こういった場合は贈与税がかかると思ってください。そうではなくて純粋に生活費や学費でしたら可能です。生活費や学費ですから何十年も積み重なるとかなりの金額になります。月に30万円とすると10年間で30万×12か月×10年=3600万にもなります。祖父の財産が苦労せず3600万円も減るのです。見逃せない節税です。また、その間、相続人はかなりの生活費が削減されるわけですからその10年間で相続人は納税資金をためましょう。
A. 相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。それまでに相続人のかたがやらなければならない事項としては主に下記のようなものがございます。
①遺産分割協議をまとめます
争族でなくても遺産分割を短期間で行うのは非常に難しいものです。
相続税の申告をする必要があるかたは、必ず相続後10ヶ月以内に遺産分割協議をまとめる必要があります。10ヶ月というのはあっというまです。というのは、10ヶ月以内にするべきことは、遺産分割協議の他にもたくさんあるからです。
②相続の放棄をする場合
相続の放棄は相続の開始を知ってから3ヶ月以内に行う必要があります
よく勘違いするケースにこのようなものがあります。「先日、父が亡くなりました。相続人は私を含めて4人です。私は、海外で暮らしており相続の放棄をするつもりです。そのため遺産分割協議書には名前だけを記載するつもりです。」
上記のような会話はよくあります。相続の放棄については、下記のことに注意してください。
(1)遺産分割協議にて財産をもらわないことと相続を放棄することは同一でないこともあります。
(2)遺産分割協議にて財産をもらわないことは、あくまでも相続人同士の話し合いであり外部の債権者(銀行など)とは関係がありません。したがって、被相続人に保証債務、借入金がある場合は、原則、相続の放棄をしない限りは法定相続分相当額につき責任を負う必要があります。
このように被相続人に債務がある場合は、当の本人は相続の放棄をしたと思ってもそうでない場合があります。さらに相続の放棄は相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出てください。
③準確定申告は相続後4か月以内に行う必要があります
また、相続後12月31日までは相続人の財産として申告しなければいけません(忘れている方が多いです)
遺産分割協議がまとまるまでは、未分割の状態と言えます。その未分割の状態での所得税の申告は注意が必要です。下記の例にて説明します。
例 1)不動産収入 年間4800万(月400万)
2)相続開始日を6月30日とします
3)相続人は3人で法定相続分は1/3とします。
3)遺産分割協議がまとまったのが翌年の2月1日とします
準確定申告は相続開始後4ヶ月以内となります。一方、相続人としての申告は7月1日から12月31日までについて申告する必要があります。税務上の取り扱いは下記の通りです。
※相続開始後遺産分割が確定するまでは未分割として法定相続分通りにて申告する必要があります。
したがって、相続人は最終的な遺産分割の結果とは関係なく、それぞれ1/3ずつの家賃収入を申告する必要があります。その結果、400万×6ヶ月×1/3を申告する必要があります。
④青色申告の申請を行います。
被相続人が青色申告をしていれば相続人も青色申告を継続して使えると思っている方が多いです。
被相続人が青色申告であっても相続人に青色申告は引き継がれません。遺産分割が決まっていないケースでは下記のようにします。
(1)相続があった場合の青色申告の申請期限は相続後4ヶ月以内です。
(2)被相続人の賃貸業を相続する場合などで、遺産分割が決まっていない場合は、相続人が各人ごとにそれぞれ青色申告を申請するか又は連名で申請します。
A.相続税の税務調査は以下のような感じです。
①被相続人の職歴、趣味を聞かれます。→被相続人の貯蓄額や財産の嗜好を推定します。
②亡くなった原因やなくなったときの状況を聞き取ります。→数年間寝たきり等の場合はその間の現金の管理者が誰かを確認し、管理者に財産が流れていないか、または財産を隠していないかを確認します。
③香典帳、日記帳などがあればその内容を見られます。→被相続人との取引先の確認をし、財産に漏れがないかを確認します。
④自宅の金庫や通帳の保管場所(台所等)または貸金庫を確認します。場合によっては貸金庫の開閉記録を確認することもあります。→保管場所に申告書に記載されている財産以外のものがないかどうか確認します。
⑤被相続人の預金通帳の流れのなかで金額の大きいものはその使途を聞かれます。→相続人に資金が流れていないかどうか確認します。
⑥相続人の預金の中で大きな入金がある場合にはその資金の源泉が調査されます。→被相続人からの入金でないか確認します。
⑦預金通帳の銀行印のチェックが行われます。→被相続人と同一のものである場合はその通帳の管理者、実質所有者の認定が問題になります。
⑧通帳を作るとき、通帳の申込書の自書欄が誰のものか確認します。→被相続人が記載したものである場合はその通帳の管理者、実質所有者の認定が問題になります。
A.取引相場のない株式について、相続税・贈与税の納税猶予の改正がありました。
事業承継を支援するため、一定の取引相場のない株式等のうち相続又は贈与によって取得した株式については、相続税・贈与税のうち一定額が猶予されます。
おおまかな要件は下記のようになっております。
1)後継者の主な要件として
・先代経営者と親族の必要はなく、親族以外の後継者も特例を受けられます。→これにより幅広く後継者を選ぶことができます
・相続の場合は、相続開始から5ヶ月以内に社長であること →先代が亡くなるときまで社長の場合は、相続から5ヶ月以内に社長になる必要があります。時間的にはタイトとなっております。
・贈与の場合は、社長であること
・後継者と親族の議決権割合を合わせて50%を超え、筆頭株主であること
2)先代経営者の要件として
・贈与直前または相続直前につき、先代と親族の議決権割合を合わせて50%を超え、筆頭株主であること
・社長であったこと
3)雇用確保の要件として
納税猶予を受けた後、雇用を確保する必要があります。5年間を平均して80%以上を維持する必要です。
4)株券発行の要件として
・贈与の場合は株券の発行が必要です。
・相続の場合は、株券の発行は必要ございません。
5)事前確認申請の要件として
・事前申請が必要なくなりました。
A.2世帯住宅の場合、構造上の区分がされず、玄関が一つで中を行き来できる構造であれば、そこに住んでいる親族は同居と扱われました。しかし、構造上区分がある2世帯住宅(住宅内部を壁等で隔て、それぞれの玄関を通じてのみ行き来のできる住宅等)の住宅の敷地については、原則的にはこの小規模宅地等の特例を受けることはできませんでした。
平成25年度の税制改正により、構造上区分があり、住宅の内部で行き来できない2世帯住宅の敷地であっても、同居しているものと扱われ、小規模宅地等の特例の対象とされました。
たとえば、親が構造上区分されている賃貸併用の2世帯住宅を建築し、1階を店舗として賃貸し、2階を息子夫婦が、3階を両親が使った場合、2階と3階の部分に対応する部分は小規模宅地等の特例の対象となります。
ここで留意点としては、区分登記された2世帯住宅については被相続人の居住部分のみが小規模宅地等の特例の対象とされます。
ケース1からケース3で説明しましょう。
●ケース1
2階建の2世帯住宅(1階は両親が、2階は息子の家族が居住)
区分登記の2世帯住宅の場合(1階分 親 2階部分 息子)
1階に対応する土地につき小規模宅地等の特例の対象となります。
●ケース2
2階建の2世帯住宅(1階は両親が、2階は息子の家族が居住)
すべて親の所有の場合
1階及び2階の両方に対応する土地のみ小規模宅地等の特例の対象となります。
●ケース3
2階建の2世帯住宅(1階は両親が、2階は息子の家族が居住)
親が1/2、息子が1/2の共有の場合
1階及び2階に両方に対応する土地が小規模宅地等の特例の対象となります。
A.以前は、終身利用権等や所有権等を購入等し、老人ホーム等に入居すると小規模宅地等の特例の要件に該当しないとされておりましたが、平成25年度の税制改正により、一定の要件があるものの、もともとの自宅敷地についても小規模宅地等の特例を受けられるようになりました。安心して老人ホーム等に入居しやすくなると思われます。
下記を満たす場合は、老人ホーム等の終身利用権等や所有権等を購入等し、老人ホーム等に入居している場合であっても、もともとの自宅敷地については、被相続人の居住の用に供されていたものとして小規模宅地等の特例の対象とされました。
1) 被相続人は、相続開始直前において要介護認定を受けていたこと
2) 介護が必要なため被相続人が、老人ホーム等に入居したこと
3) 老人ホームに入居後、当該家屋が貸付等の用途に供されていないこと
ここで留意して欲しいことがあります。今回の改正は、被相続人が老人ホームに
入居した後であっても被相続人が継続して居宅として利用しているものと扱うと
いうことです。
したがって小規模宅地等の特例に該当するためには、相続するかたの要件として、配偶者か又は以前から同居していたなど、取得する側の要件を満たす必要があります。
そのため、介護が必要となったため老人ホームに入居し、老人ホームで亡くなった後に相続した子供がそのもともとの自宅敷地を売却した場合などは、小規模宅地等の特例を受けることはできません。
また、介護が必要となった父親を子の家に引き取った後に老人ホームに入居した場合は、もともとの父親の自宅には小規模宅地等の特例の適用はできないことになります。というのは、元の父親の自宅から、子の家に移った後に老人ホームに入所しているので、子の家に移った時点で、生活の根拠が子の家に移ったと考えられ、小規模宅地等の特例は受けられないからです。
A.法規模宅地等の拡充につきましては、①特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の完全併用が可能になったこと、②貸付事業用宅地等の拡充があります。
1.特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の完全併用が可能に
以前は2以上の宅地等につき小規模宅地等の特例の適用を受ける場合は限度面積について調整計算が必要でした。
平成25年度の税制改正により、特定事業用宅地等及び特定居住用宅地等の2つについては、完全併用が可能となりました。
したがって、特定事業用宅地等で最大400㎡、特定居住用宅地等で最大330㎡の合計730㎡まで特例を受けることが可能となりました。
小規模宅地等にかかる適用対象面積の限度額730㎡
(特定事業用宅地等で最大400㎡、特定居住用宅地等で最大330㎡の合計730㎡)
どのくらいの節税効果があるか考えてみましょう。たとえば自宅の敷地330㎡、相続税評価額が1億2,000万円、特定事業用の敷地が400㎡、相続税評価額7,000万の場合を考えてみましょう。
(改正前の評価減の金額)
(自宅の部分のみ)1億2,000万円÷330㎡×330㎡×80%=9,600万円
⇒改正前の評価減の金額は9,600万円
(現行の評価減の金額)
(自宅の部分)1億2,000万円÷330㎡×330㎡×80%=9,600万円
(特定事業用部分)7,000万円÷400㎡×400㎡×80%=5,600万
(合計)9,600万+5,600万=1億5,200万
⇒現行の評価減の金額は1億5,200万円
(節税効果)
小規模宅地の評価減の金額5,600万円増加
1億5,200万△9,600万=5,600万円
2.貸付事業用宅地等の拡充
「限度面積」については、「貸付事業用宅地等」と「特定事業用宅地等」、「特定同族会社事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」についてこの特例の適用を受けようとする場合に、次の算式を満たす面積がそれぞれの宅地等の限度面積になります。
(算式)
A×200/400+B×200/330+C≦200㎡
A…特定事業用宅地等の面積
B…特定居住用宅地等の面積
C…貸付事業用宅地等の面積
たとえば自宅の他に賃貸マンションなどをお持ちの方を例にあげましょう。
自宅の敷地が200㎡、相続税評価額が5,000万円、マンションの敷地が200㎡、相続税評価額が5,000万の場合を考えてみましょう。下記のとおり現行は評価の引下が563万円も大きくなっております。
(改正前)小規模宅地の評価減の金額4,412万円
(自宅の部分)5,000万円÷200㎡×200㎡×80%=4,000万円
(マンションの部分)5,000万÷200㎡×33㎡×50%=412万円(万円未満切り捨て)
*小規模宅地等の特例の適用にあたり、特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、貸付事業用宅地等を併用する場合は下記の計算式から適用面積の限度額を算定します。この例ではマンション部分は33㎡となります。
*A+B×5/3+C×2≦400㎡
A特定事業用宅地等の面積
B特定居住用宅地等の面積
C貸付事業用宅地等の面積
(現行)小規模宅地の評価減の金額 4,975万円
(自宅の部分)5,000万円÷200㎡×200㎡×80%=4,000万円
(マンションの部分)5,000万÷200㎡×78㎡×50%=975万円
*小規模宅地等の特例の適用にあたり、特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、貸付事業用宅地等を併用する場合は下記の計算式から適用面積の限度額を算定します。この例ではマンション部分は78㎡となります。
*A×200/400+B×200/330+C≦200㎡
A特定事業用宅地等の面積
B特定居住用宅地等の面積
C貸付事業用宅地等の面積
A.管理会社を設立することで所得税・相続税を節税することが可能です。
では、管理会社を作ることで具体的にどのような効果を得ることができるのでしょうか。見てみましょう。
1.管理会社を作る3つの目的
節税のために管理会社を設立する目的としては、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
①所得の分散・②財産の移転・③経費による節税対策
各項目を見てみましょう。
【目的① 所得の分散】
例えば、概算にて説明すると
(1)2000万の所得を分散しない場合
分散しないと2000万×50%=1000万円の税金(所得税・住民税・事業税の合計)がかかります。
(2)2000万の所得を4人で均等に分散する場合
2000万÷4=500万
500万×20%=100万(一人分)(所得税・住民税)
100万×5人分=500万円に減少。
上記を比較すると分散することにより500万円(1000万△500万)もの税額を節税することにつながります。したがって節税はまず、所得の分散が最も合理的な方法といえます
これは所得税の税率が所得金額に応じて5%から45%となっていることと、不動産賃貸業には事業税の5%を負担する必要があるからです。
【目的② 財産の移転】
②-1.管理会社が無いケース…推定相続人(通常、子供)に現金を移転する方法
所得税を支払ったあとの金額(可処分所得)から贈与という形をとります。従いまして、現金をもらった推定相続人にさらに贈与税がかかります。
例えば、3000万の所得に対しておおよそ1200万の税金(所得税・住民税・事業税)がかかります。
ここから仮に500万円を資金移動しようとすると相続人に53万円の贈与税がかかります。
②-2.管理会社を設立して現金を移転する方法
管理会社を設立し、給与という形で相続人に500万を渡せます。
この形態ですと所得は3000万円から500万円ほど減ります。
この効果は税率を仮に50%と想定すると、約250万の節税となります。
一方、500万を給与でもらった相続人については、55万程度の税額(所得税・住民税)ですみます。
上記と比較すると管理会社を設立して給与という形をとると250万円もの節税効果があることがわかります。このように管理会社を設立することにより可処分所得から贈与といった形態から、給与を支払うといった形にすることによりかなりの効果があるといえます。これを10年続けると250万×10=2500万もの大金になります。
【目的③ 経費による節税対策】
管理会社の設立によりケースバイケースですが、個人申告と比較して経費に落とせる金額が格段に増えます。以下では経費による8つの節税対策をご紹介します。
(1)交際費
個人申告でも経費になりますが、税務署の目は厳しいといえます。一方、法人ですと実務的にはある程度認められているのが現状です。
(2)車両の経費化
個人申告では、一般の普通車を経費にすることは非常に難しいと思われます。一方、法人については実務的にはある程度は認められているのが現状です。(フェラーリ等のスポーツ車は不可能ではありませんが、あまりお勧めできません)
(3)別荘・保養所の経費化
個人申告では、経費にできません。一方、法人については接待目的、保養所など業務使用が認められれば経費に落とすことは可能です。業務として相当であれば別荘の維持費(光熱費・固定資産税・管理費・建物の減価償却費)が経費となります。
(4)生命保険の経費化
個人申告では、経費に落ちません。
一方、法人については保険の種類にもよりますが経費に落ちます。
個人については経費でなく所得控除として10万円の控除が可能です。(H24以降は12万)
従いまして法人設立後は、個人にてご加入済みの保険についても見直すことにより節税を絡めた合理的な保険加入が可能になります。
例えば、養老保険や年金、終身保険は個人加入に、定期保険は
法人加入するなどが考えられます。
(5)退職金の経費化
個人申告については、ご自分自身やご親族の退職金については経費におちません。
一方、法人については経費にすることが可能です。
また、退職金をもらった側の税務ですが、かなり優遇されております。優遇された退職金を使うことが管理会社設立の目的でもよいでしょう。
退職金の税制ですが、a.生存時の退職金とb.死亡時の退職金では相違いたします。
a.生存時の退職金
*他の所得と区分して税額を計算します(申告分離課税です)
従いまして、他の所得の大小に影響されません。
*1年間あたり40万の退職金控除を受けられます。さらに20年を超えると70万に増えます。
*退職金控除を差し引いた後の金額がそのまま税金の対象にされるのではなく、その半分が税金の対象になります。
(例)退職金を2000万支払う場合(勤続15年)
2000△600(40×15)=1400
1400×1/2=700(税金の対象)
税金 170万くらい(住民税を含む)
b.死亡時の退職金
*所得税でなく相続税がかかります。
*500万×法定相続人の数の非課税枠があります。
(例)退職金を2000万支払う場合(勤続15年・相続人4人の場合)
2000万△2000万(500×4人)=0万(相続税の対象0になります)
(6)役員の小規模企業共済への加入
個人の場合ですと、5棟10室、駐車場50台以上などの事業的規模のかたのみ加入可能ですが、法人ですと役員に加入することにより誰でも加入が可能となります。
年額84万まで所得控除が受けられますので節税が可能です
また、解約した場合ですが、退職に伴う場合は、上記の退職
金と同様の扱いになりますので優遇措置をうけることが可能です。
(7)給与の経費化
個人申告の場合については、青色事業専従者給与として給与が経費化できますが、下記のように要件が厳しくなっております。不動産賃貸業については実務的には高額な専従者給与は経費にすることは不可能と考えられます。
1.1年間の1/2以上働くこと。
2.労務の対価であること。(言い換えますと実際に体をつかって労働することです)
3.税務署に届け出ること。
一方、法人については、上記のような要件がありません。
役員に加入することが要件ではありませんが、役員に加入することにより給与を高く設定することが可能です。
法律的に説明いたしますと、言葉が少しややこしいですが役員以外の者は雇用契約となり労務の対価が給与を支払う主な理由になりますが、役員になりますと会社に対しての委任契約となり、労務のほかに会社に対する責務も発生し、それに見合う給与という観点から給与を高く設定できるかたちになります。
(8)ゴルフ会員権の年会費・ロータリーの年会費
個人申告では経費におちませんが、法人では業務と認められれば経費におちます。
【まとめ】
個人申告では経費として認めらないものが多々あります。そのため、法人を設立することにより確実に経費に落とせる金額は増えます。
また、実務的には個人申告では認められない経費も法人ではある程度、経費にしてしまっているのが税務の実務でもあります。(本来、個人・法人の区別により経費の可否の判断に相違はないのですが)
経費に落ちるということは高所得者にとっては収入が2倍になることを意味します。経費に落ちない場合は、50%の税金を支払った後の金額から費用を支払う必要があるからです。ですから業務に関係する費用を経費にすることは収入を2倍にすることと同じ意味になります。
2.管理会社の3つの形態
①管理型管理会社
1. 通常の管理会社を想像すればよいと思われます。管理会社が借主さまから家賃を預かり、管理料や立替金(細かい修繕費)を差し引いてオーナーに返還します。
*管理契約書の作成が必要になります。
*管理料が管理会社の売上になります。
*毎月、決まった時期までに管理料等を差し引いてオーナー名義の口座に送金する必要があります。
*管理料はおおよそ10%から15%程度が通常です。
*管理料が最低でも500万はあったほうが無難です。(家賃収入にして3000万円以上ないと節税効果は低いでしょう)
*家賃の振込み先変更届けと管理会社設立のご案内を借主さま全員に届ける必要があります。
*管理会社とオーナー間にて補修費用等の負担を取り決めます。通常は固定資産税、共用電気代、退去時のリフォーム費用、天災等による修繕費はオーナーの負担のことが多いです。
②サブリース型管理会社
1.管理会社とオーナーの間で、賃貸借の契約をします。一般的には一括借り上げや転貸のある家賃保証契約はサブリースと言われております。たとえば、世帯数が10戸のアパートにつき1戸あたりの家賃が10万だとすると、一括契約ですが10戸まとめて80万から90万で契約します。この契約形態では空き室のリスクを管理会社とオーナーで共有する形になります。
*オーナーと管理会社間で賃貸借契約書を締結いたします。
*既契約については借主さまとの契約書を変更する必要があります。ただし、事務手続きが煩雑することが予想されますので通知に程度に抑え、更新時に契約書を作成してもよいでしょう。
*既契約についての敷金についてはオーナーから管理会社へ資金を移動するのが通常です。
*サブリース後の敷金・礼金・更新料はすべて管理会社の収入となります。
*サブリース後の管理会社がオーナーに支払う家賃と借主さまから受ける家賃の差額の割合ですが通常、13%から18%くらいがよいでしょう。(空き室リスクを負担するため管理型の管理会社より高い割合となっております)
*サブリース後の管理会社とオーナー間にて補修費用等の負担を取り決めます。通常は固定資産税、共用電気代、退去時のリフォーム費用、天災等による修繕費はオーナーの負担のことが多いです。
*受取家賃と支払家賃との差額が最低でも500万はあったほうが無難です。(家賃収入にして2800万以上ないと節税効果は低いでしょう)
③所有型管理会社
建物を会社の所有にする方式です。
*家賃の全額が会社の収入となります。
*新規にマンション等を建設する場合や、個人所有のものを売却する方法もあります。
*土地は個人所有となっておりますので、管理会社は地代を支払う必要があります。(おおよそ土地の固定資産税の2倍から3倍でよいでしょう。土地の賃貸借契約と同時に管理会社との間にて「土地の無償返還の届け出書」を税務署に提出します)
*家賃の金額は最低でも500万以上はあったほうがよいでしょう。(上記2つの管理会社と比較すると格段に家賃収入が少なくても設立可能となります)
*上記の2つのタイプの管理会社の管理料や支払い家賃の金額については金額の大小につき税務のトラブルがありますが、このタイプではまったくこの問題は生じません。
3.管理会社の管理料の考え方
①税務署からクレームがあった場合の管理料の割合
税務調査等により税務署からクレームがあり管理料やサブリースで支払う家賃につき否定された場合は、中小企業・零細企業・上場企業を含めた管理会社の管理料の相場をもとに訂正することを要求されます。
上記の相場ですが、上場企業も含まれておりますので、通常は、管理会社で5%から7%、サブリース型の管理会社で8%から15%程度になります。
したがって30%の管理料をとっていた場合は8%の管理料を基にオーナーは修正申告または更正を受ける形となります。
*ただし、下記のように全額否認という判決もございます。
管理会社タイプ H18年の判決
管理料20%以下でも管理の実態を伴わないとされ、全額否認の注目
すべき判決もあります。
外部の管理会社とオーナー会社との管理契約のうち重複契約をチェックする必要があります。
管理業務記録簿の作成などの作成が必要かもしれません。
②税務署からクレームがある管理料の割合
税務調査でクレームが入る管理料やサブリースの場合の支払家賃ですがおおよそ私の経験では20%を超えた場合に限り入る気がします。言い換えると20%を超えないとクレームが入りにくいということです
たとえば管理料15%の管理会社は何も税務署からのクレームはなく、一方、管理料25%の管理会社は税務署からのクレームにより訂正させられ、その際の管理料は15%でなく、世間相場である5%から7%になってしますのです。
矛盾するような気がするかもしれませんが、税務の現場では管理料やサブリースの家賃を否認する線(おそらく20%程度)と否認した場合の管理料の線(おそらく5%から7%)とは相違するのです。
4.管理会社の設立の際の7の留意点
①資本金
消費税の還付を受ける場合以外は、資本金を1000万円未満にします。1000万以上にすると第1期及び2期ともに消費税の納税義務が発生します。
②株主構成
推定相続人が株主になります。理由は株式も相続財産になってしまうからです。
さらには土地を賃借し、建物の所有が管理会社(所有型の管理会社)の場合は、土地の2割相当額が株式の価格に加算されてしまいますから要注意です。
推定相続人が資本金が無い場合は、金銭貸借契約書(利息はなしでもかまいません)を締結し金銭を借りてから出資すればよいでしょう。
③役員構成と給与
給与を支払う予定の推定相続人については株式会社の取締役にします。
④設立の手数料
登記費用ですが司法書士報酬も含めて35万円程度かかります。
⑤税理士等への支払い
記帳処理や申告料を含めて毎年50万程度は必要です。
⑥社会保険の加入義務
常勤の役員については厚生年金と健康保険に加入する必要があります。
会社負担分も合わせておおよそ給与の2割くらいが保険料となります。(かなりの負担になることが予想されます)
5.税務調査への8つのポイント
①交際費
相手方の氏名を領収書に記載します。
②車両
車両維持費(ガソリン・車検・自動車税)などについては業務以外のものも若干あるものとして経費にしない部分をつくります。(1割程度経費にしないとよいでしょう)
または個人負担分として1ヶ月あたり1万円以上のリース料を支払うのもよいかもしれません。
③福利厚生費
親族間での福利厚生費は原則ないものとします。家族間ですと業務とそれ以外の区別が非常に難しいと思われます。(一方、交際費は相手方が他人ですので区別が割りと簡単です)
一般的には限定的に忘年会・新年会・暑気払い・健康診断料・置き薬・作業服等になります。
④別荘
家族での業務外での使用の場合は使用料を支払ってください。
世間相場で2日1万から3万で十分でしょうか。
⑤管理料
20%を超えないようにします。
⑥給与
振込みにします。また振り込む通帳は、相続人が自ら使用する銀行印のものを使用します。通帳やカードの管理も相続人自らが行うようにします。
⑦現金出納帳
現金出納帳を作成することが最もよい方法ですが、事務手続きが煩雑な場合は、現金で支払った経費を預金より精算する形をとり、通帳を現金出納帳の代わりにします。これだけでも税務署からの印象はかなりよくなります。
⑧旅費
家族旅行を経費にしないようにします。ただし、社員旅行という形でしたら2年に1度は認められると思われます。この場合は4泊5日以内にて1人あたり10万程度の負担とします。
6.3つのケース例
①家賃5000万円のマンションをすでにお持ちの個人のかた
*一般の管理会社を設立
*振込み口座の変更と管理会社設立のご案内*12%の管理料を取る
*役員を4名
*おおよそ250万くらいの節税も可能
②給与3000万のエリートサラリーマンで家賃1000万円(経費は200万)のマンションをお持ちのかた
*所有型の管理会社を設立
*建物の帳簿価額にて売却
*賃貸借契約の変更
*無償返還の届出
*土地の賃貸借契約書
*役員ご本人のみ
*節税160万は可能
③不動産所得が3000万円、55歳のかたで、返済も終わった古くなったマンションをお持ちのかた
*所有型の管理会社を設立
*建物の帳簿価額にて売却
*賃貸借契約の変更
*無償返還の届出
*土地の賃貸借契約書
*役員ご本人と相続人
*節税300万は可能