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●キャッシュフロー計算書

1.キャッシュフロー経営

国際会計基準(IAS)

国際会計基準委員会(IASC)が公表する会計基準書です。各国の会計士団体の同意によって設立された委員会でもちろん日本も参加しています。この委員会は各国の公認会計士団体により運営されており、民間の団体です。
日本での会計制度改革は1999年より段階的に実地され、IASとさほど変わらなくなりました。この改革により日本でもキャッシュフロー計算書が取り扱われるようになったのです。
今日の経営環境は企業人に対して大きな変化をもたらしています。
これまでは企業を支えていた金融機関は多大な不良債権によって自分自身を守らなくてはならなくなりました。貸はがしや貸し渋りも多くなり、企業としては金融機関を頼りにしてはいけない時代がやってきたといえます。
そこで、損益計算(利益)だけを見ていけばよい時代は終わりをつげ、資金の流れ(キャッシュフロー)が重要視され始めたのです。キャッシュフロー経営が今後、大きな意味を持ってくるようになったのです。

2.キャッシュフローとは?

簡単に言いますと【資金の流れ】です。現金がどのように増えたりしているか減ったりしているかを見るものです。現在の会計では試算表から直接見ることは出来ません。 それでは、簡単な例を挙げましょう。

例1 売上高 2000万円 総費用 1800万円 のA会社
仮に売上高が全額現金で回収され、総費用を全額現金で支払っていたとします。
このA会社の利益は・・・2000万円-1800万円=200万円となります。
このA会社のキャッシュフローは・・・
2000万円-1800万円=200万円
このような場合には利益、キャッシュフローとも200万円で同額になります

例2 上記した【例1】の総費用の中に減価償却費(買った時点で現金を払っている)が300万円入っているとします。そうすると損益計算の総費用は1800万円のままですが、収支計算(現金の増減)の方は・・・
1800万円-300万円(減価償却費)=1500万円となります。

   損益計算          収支計算
売上高  2000万円     売上高  2000万円
総費用 -1800万円     総費用 -1500万円
利 益   200万円     現金増加  500万円

となり、利益の金額とキャッシュフローの金額に違いが出てくるのです。
このように損益計算に対して収支計算から求められる現金の増減をキャッシュフローと言います。

3.キャッシュフローの考え方

1.直接法と間接法
キャッシュフローには直接法による表示と間接法による表示があります。直接法とは、収入から支出を差引いて計算します。間接法とは税引前利益から減価償却費等を加算することにより計算することです。
直接法・・・収入-支出
間接法・・・税引前利益+減価償却費+その他の増減
※直接法、間接法は営業キャッシュフローを作成する時に手法が違うだけで、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローは直接、間接の違いはありません。

2.営業キャッシュフロー
実際の営業活動からどのくらい現金が得られたかを意味しています。まずは、営業段階で現金の増加があるかどうかを見ていきます。

3.投資キャッシュフロー
実際の設備投資や有価証券(資金の減少)とそれらの売却した額(資金の増加)から計算します。この増減で企業として今までの投資したものがどのくらい反映されているか見ていきます。また、今後の投資計画を行うことになります。

4.財務キャッシュフロー
長短期の借入金の増加額(資金の増加)と借入金の返済額(資金の減少)等から計算します。ここでは最終の金額が出てきますので、どの様に借入を申し込むのか、何時どの時期にいくら位必要なのかを判断します。

4.キャッシュフローの作り方

●営業キャッシュフロー

直接法
直接法は上記で書いた通り収入-支出で表されます。
ただし営業キャシュフローを作成いたしますので、収入(営業収入)は下記のようにして計算します。

営業収入=売上高-売上債権(受取手形、売掛金)の増減

支出は営業キャッシュフローを作成する時には、主に以下の勘定を計上します。
営業支出は・・・
営業費用、減価償却費、棚卸資産の増減、前払費用の増減、仕入債務の増減、受取利息受取高、支払利息支払高、納税額

間接法
間接法では、税引前利益+支払利息-受取利息+その他の増減を計算します。これは営業利益をあらわしています。営業キャッシュフローにおいて基盤になるものは営業利益でありますので、このような計算をしています。直接法においては、売上高-営業費用となります。
その他の増減の項目で主なものを下記に記載します。
減価償却費、売上債権の増減、棚卸資産の増減、前払費用の増減、仕入債務の増減、受取利息受取高、支払利息支払高、納税額

売上債権の増加はその分現金を回収していませんのでキャッシュフローを減らし、又、棚卸資産の増加分はその分だけ支出を増やすことになりますので、キャッシュフローを減らします。仕入債権の増加は支出を抑えることになりますのでキャッシュフローを増加させます。
簡単に言うと実際に現金が出ていないものをプラスし現金が出ているものをマイナスするということです。
受取利息受取高と支払利息支払高は実際の収支を計上します。未収利息や未払利息がある場合には下記のように計算します。

受取利息受取高=前期未収利息+受取利息(P/L※)-当期未収利息
支払利息支払高=前期未払利息+支払利息(P/L※)-当期支払利息

納税額につきましても下記のように計算します。
納税額=前期未払税金+法人税等(P/L※)-当期未払税金
※は損益計算書のこと

●投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー

投資キャッシュフローは設備投資や有価証券の動向を見ていくことなので、キャッシュフロー計算書の中では売却しない限りプラスは出てきません。下記に主な科目を書いておきます。実際に計算するときに確認しましょう。

  • 有価証券の取得及び売却、有形固定資産の取得及び売却
  • 連結範囲の変更に伴う子会社株式の取得及び売却
  • 貸付による支出、貸付金の回収による収入

財務キャッシュフローは主に借入金の増加額や返済となっておりますのでこれも実際に計算するときに確認しましょう。
借入金による収入及び返済、社債の発行による収入及び償還株式の発行による収入、自己株式の取得等。

●フリーキャッシュフロ
営業キャッシュフローからその企業が事業活動を維持する為の再投資額を差引いたものです。簡単に言えば、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足したものになります。その企業が自由(フリー)に使用することが出来ることを意味しています。これからの企業にとって自由に使える金額がどのくらいあるかを知る重要な数字となります。

5.キャッシュフロー計算書を作成しましょう

今まで、見てきたことを実践に移しましょう。
下記にF社の貸借対照表(前期と当期)と損益計算書があります。これを使ってキャッシュフロー計算書を作成しましょう。
F社の貸借対照表(前期と当期)と損益計算書

以上の貸借対照表と損益計算書からキャッシュフロー計算書を作成すると下記のようになります。
キャッシュフロー計算書

上記のキャッシュフロー計算書について解説します。

●営業キャッシュフロー

直接法
【営業収入】
売上高のところには損益計算書の売上高の金額をそのまま入れてください。つぎに売上債権の増減の金額ですが貸借対照表の売上債権の蘭の前期と当期を見ていただきます。前期から当期は増加していますので、
27500-31800=△4300になります。よって売上債権の増加になり△4300となります。

【営業支出】
営業費用・・・・・・売上原価と販売費・管理費を足します。
75300+20100=95400
金額を営業収入から引きますのでマイナスになります。
減価償却費・・・・・当期の減価償却明細の合計の金額を使い、金額が出てないものなのでプラスです。
棚卸資産の増加・・・貸借対照表の当期から前期を引きます。
14800-12200=2600
棚卸資産の増加は支出のプラスです。
前払費用の減少・・・貸借対照表の当期から前期を引きます。
2200-2900=△700
前払費用は当期金額が減っているので支出のマイナスになります。
仕入債務の増加・・・貸借対照表の当期から前期を引きます。
22100-21800=300
当期の金額が増えているので支出のマイナスになります。
受取利息受取高・・・損益計算書の金額です。支出のマイナスになります。
支払利息支払高・・・損益計算書の金額です。支出のプラスになります。
納税額・・・・・・・前期未払税金+当期法人税等-当期未払税金となりますので下記の計算式となります。
800+2100-1100=1800 支出のプラスになります。

間接法
先ほども述べましたように間接法は税引前利益+支払利息-受取利息から営業利益を算出して計算を始めます。ここでは損益計算書の経常利益が法人税等を引く前の利益となっていますから、4200+300-100=4400となります。そこから減価償却費や個々の増減を増加させていきます。内容に関しては、直接法と一緒ですので参考にしてください。そうすれば間接法のキャッシュフロー計算書は完成します。
ここまでで、営業キャッシュフローは完成していると思います。

●投資キャッシュフロー
建物・・・貸借対照表の建物を見ていただくと当期が前期よりも多くなっています。ここで購入したことがわかると思います。通常、固定資産は購入しない限り当期が前期より増加することは考えられないからです。又、建物の減価償却費を計上しているはずなので、減価償却分だけ減少することが通常です。よって建物の投資額=前期の金額-当期の金額-建物減価償却費となります。
4500-4800-100=△400
400万円のものを購入していることになります。
什器備品・・・同じように什器備品を計算すると
3800-4200-300=△700
700万円の投資をしていることになります。
車両運搬具・・・車両運搬具も計算しましょう
1500-1700-200=△400
400万円の投資をしていることになります。

●財務キャッシュフロー
短期借入金・・・貸借対照表の当期が前期よりも増加していますのでその増加分が財務キャッシュフローの増加になります。
10900-9500=1400
長期借入金・・・短期借入金と同じように計算しましょう。
18200-17000=1200
配当金・・・・・当期に行われた利益処分の蘭のⅡ利益処分額に配当金の金額がありますので財務キャッシュフローのマイナスになります。

これらのことをすべて行えると、キャッシュフローが完成します。
又、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計した金額が【フリーキャッシュフロー】となり、これからの企業にとって一番大事にされる指標となることでしょう。

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