ホーム 藤井会計事務所サービス一覧 歯科経営コンサルティング 資産税コンサルティング 経営コンサルティング

●よくある事例とその解決策

Q73. 相続税の納税猶予とは何ですか?どのように使うのか教えてください

A.後継者の自社株の相続又は贈与にかかる納税を猶予する制度です。詳しくは下記をご参照ください。

1.相続税の納税猶予の内容

後継者の自社株の相続又は贈与にかかる納税を猶予する制度です。
猶予される税額は発行済株式総数の2/3までで、後継者が従前から株式を一部保有している場合には、これを控除した残数が対象となり、対象になった株式にかかる相続税の80%に相当する相続税が猶予されます

2.相続税の納税猶予を受けるための要件

1)被相続人は会社の代表権があったこと。
代表権に制限を付けることが稀にございますが、この場合は適用外です。
例えば、代表者が小切手をきる際に制限をつけるなど
→登記簿謄本や定款を確認します

2)被相続人は相続開始の直前において本人および同族関係者で議決権を50%超保有していること
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません。
相続開始時において被相続人が代表者でない場合には、代表者であった期間内のいずれかの時及び相続開始の直前の時点の両方を満たす必要があります。
→株主名簿または定款で確認します

3)被相続人は相続開始の直前において同族内(後継者を除く)で筆頭株主である又はあること。
後継者を除くという点が留意点です。
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません
相続開始時において被相続人が代表者でない場合には、代表者であった期間内のいずれかの時及び相続開始の直前の時点の両方を満たす必要があります。
→株主名簿または定款で確認します

4)後継者は相続開始の直前において役員であること
→登記簿謄本や定款を確認します

5)後継者は相続開始から5ヶ月経過後において代表権があること
→登記簿謄本や定款を確認します

6)後継者は本人および同族関係者で議決権を50%超保有していること
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません 
→株主名簿または定款で確認します

7)後継者は同族内で筆頭株主であること。
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません
→株主名簿または定款で確認します

8)会社は相続開始から8ヶ月以内に経済産業大臣の認定を受けていること
認定を受ける内容ですが
・中小企業であること
・非上場企業であること
・風俗営業会社でないこと
→認定書の写しで確認します

9)会社は相続開始時において常時、従業員が一人以上在籍していること
従業員に親族も含まれます
役員は含まれません
厚生年金または健康保険加入者が対象です
→年金事務所または健康保険組合からの書類

10)会社が一定の資産保有型会社に該当しないこと
相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度開始の日から申告期限までの間のいずれかの日で判定します
→貸借対照表で確認します

11)会社は一定の資産運会社に該当しないこと
相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度開始の日から申告期限まで終了するいずれかの事業年度で判定します
→損益計算書で確認します

12)会社の売上が0でないこと
相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度開始で判定します
→損益計算書で確認します

13)黄金株を後継者以外が有していないこと
→株主名簿または定款・登記簿謄本で確認します

14)会社は現物出資等資産の割合が70%未満であること
この規制は相続開始前に被相続人の個人資産を会社に現物出資するなどの租税回
避行為への税務当局の対応です。相続開始前3年以内の現物出資及び贈与に占める割合が総資産の70%を超える場合は適用なしとなります。また、出資または贈与を受けた財産を売却した場合も保有しているものとみなして算定します
→相続税の申告書第8表の2の付表1で確認します

3.贈与税の納税猶予の内容について教えてください

贈与税の納税猶予は発行済株式総数の2/3までで、後継者が従前から株式を一部保有している場合には、これを控除した残数が対象となり、対象になった株式にかかる贈与税の100%に相当する贈与税が猶予されます 

4.贈与税の納税猶予を受けるための要件を教えてください。また、何を見て確認したらよいですか?

1)贈与者は贈与前のいずれかの日において会社の代表権があったこと。代表権に制限を付けることが稀にございますが、この場合は適用外です。例えば、代表者が小切手をきる際に制限をつけるなど
→登記簿謄本や定款を確認します

2)贈与者は、贈与の直前につき本人および同族関係者で議決権を50%超保有してい
ること
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません。
贈与の直前において贈与者が代表者でない場合には、代表者であった期間のいずれかの時及び贈与の直前の両方の時点で要件を満たす必要があります
→株主名簿または定款で確認します

3)贈与者は贈与の直前につき同族内(後継者を除く)で筆頭株主であること。
後継者を除くという点が留意点です。
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません
贈与の直前において贈与者が代表者でない場合には、代表者であった期間のいずれかの時及び贈与の直前の両方の時点で要件を満たす必要があります
→株主名簿または定款で確認します

4)贈与者は贈与のときに代表権を有してないこと
→登記簿謄本または定款で確認します

5)後継者は贈与の時に20歳以上であること
→戸籍謄本を確認します

6)後継者は贈与の時において代表権があること
→登記簿謄本や定款を確認します

7)後継者は本人および同族関係者で議決権を50%超保有していること
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません
→株主名簿または定款で確認します

8)後継者は同族内で筆頭株主であること。
この議決権には一部制限がある株式を含みます。従って全部につき制限のある株式は含みません
→株主名簿または定款で確認します

9)後継者は贈与の日まで引き続き3年以上会社の役員であること
→登記簿謄本または定款で確認します

10)後継者は、贈与の時から贈与税の申告書の提出期限までこの特例を受けた株式の全部を保有していること
この特例の適用を受けていない2/3を超える部分の株式や既に保有していた株式の保有要件はありません
→株式等納税猶予税額の計算書で確認します

11)会社は贈与の日の属する年の翌年1月15日までに経済産業大臣の認定を受けてい
ること
認定を受ける内容ですが
・中小企業であること
・非上場企業であること
・風俗営業会社でないこと
→認定書の写しで確認します

12)贈与の時において常時、従業員が一人以上在籍すること
従業員は親族も含まれます
役員は含まれません
厚生年金または健康保険加入者が対象です
→年金事務所または健康保険組合からの書類

13)贈与の時において一定の資産保有型会社に該当しないこと
贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度開始の日から申告期限までの間のいずれかの日で判定します
→貸借対照表で確認します

14)贈与の時において一定の資産運会社に該当しないこと
「贈与」の日の属する事業年度の直前の事業年度開始の日から申告期限まで終了するいずれかの事業年度で判定します
→損益計算書で確認します

15)売上が0でないこと
贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度開始で判定します
→損益計算書で確認します

16)黄金株を後継者以外が有していないこと
→株主名簿または定款・登記簿謄本で確認します

17)現物出資等資産の割合が70%未満であること
この規制は贈与前に贈与者の個人資産を会社に現物出資するなどの租税回
避行為への税務当局の対応です。贈与前3年以内の現物出資及び贈与に占める割合が総資産の70%を超える場合は適用なしとなります。また、出資または贈与を受けた財産を売却した場合も保有しているものとみなして算定します
→株式等納税猶予税額の計算書で確認します

5.相続税の納税猶予が取り消しになるのはどういう場合でしょうか?

1)経営承継期間内につき
①特例を受けた株式を譲渡等した場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
②後継者が代表者をやめたとき
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
③従業員数の雇用割合が8割未満になるとき
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
④会社が資産管理会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑤会社が資産運用型会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑥会社の収入が0となった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑦黄金株を承継人以外の者が有することとなった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑧減資などにより資本金または資本準備金が減少した場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑨特例を受けた株式の議決権に制限を加えた場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となりません。

2)経営承継期間後につき
①特例を受けた株式を譲渡等した場合
→譲渡等した株式が取り消しの対象となります
②後継者が代表者をやめたとき
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
③従業員数の雇用割合が8割未満になるとき
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
④会社が資産管理会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑤会社が資産運用型会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑥会社の収入が0となった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑦黄金株を承継人以外の者が有することとなった場合
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
⑧減資などにより資本金または資本準備金が減少した場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑨特例を受けた株式の議決権に制限を加えた場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となりません

6.贈与税の納税猶予が取り消しになるのはどういう場合でしょうか?

1)経営承継期間内につき
①特例を受けた株式を譲渡等した場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
②後継者が代表者をやめたとき
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
③従業員数の雇用割合が8割未満になるとき
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
④会社が資産管理会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑤会社が資産運用型会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑥会社の収入が0となった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑦黄金株を承継人以外の者が有することとなった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑧減資などにより資本金または資本準備金が減少した場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑨特例を受けた株式の議決権に制限を加えた場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑩贈与者が代表者になった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります

2)経営承継期間後につき
①特例を受けた株式を譲渡等した場合
→譲渡等した株式が取り消しの対象となります
②後継者が代表者をやめたとき
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
③従業員数の雇用割合が8割未満になるとき
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
④会社が資産管理会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑤会社が資産運用型会社に該当する場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑥会社の収入が0となった場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑦減資などにより資本金または資本準備金が減少した場合
→特例を受けた株式の全部が取り消しの対象となります
⑧特例を受けた株式の議決権に制限を加えた場合
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
⑨黄金株を承継人以外の者が有することとなった場合
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません
⑩贈与者が代表者になった場合
→特例を受けた株式の取り消しにはなりません

7.相続税の猶予税額が免除されるのはどういう場合ですか?

①後継者が死亡した場合
②経営承継期間後に後継者が次期後継者に対象株式につき贈与税の増税猶予にかかる贈与をした場合
③経営承継期間後につき会社が破産等した場合
④経営承継期間後につき対象株式の全部譲渡したときに、時価が猶予税額を下回った場合につき、猶予税のうち時価を超える金額

8.贈与税の猶予税額が免除されるのはどういう場合ですか?

①後継者が死亡した場合
②先代経営者が死亡した場合
③経営承継期間後につき会社が破産等した場合
④経営承継期間後に後継者が次期後継者に対象株式につき贈与税の増税猶予にかかる贈与をした場合
⑤経営承継期間後につき会社が破産等した場合
⑥経営承継期間後につき対象株式の全部譲渡したときに、時価が猶予税額を下回った場合につき、猶予税のうち時価を超える金額

9.相続の納税猶予を利用する最大のメリットはなんでしょうか?

自社株にかかる相続税を納める時間を稼げることです。納税猶予を受けない場合は、当初の申告期限までに相続税を納める必要があります。制度を受けることにより時間を稼げると考えることもできます。言い換えると期限の利益=資金調達効果とも言えます。もちろん、制度の要件を外れた場合は、利子税+本税の支払があります。しかし、利子税は懲罰的な加算税とは全く違います

10.贈与税の納税猶予を利用する最大のメリットはなにでしょうか?

贈与は相続との最大の違いは時期を選択できる点です。
従って、先代経営者は自分の意志で、選んだ時期に後継者をバックアップすることができます。相続・贈与の納税猶予で一番懸念される従業員の雇用維持要件についてもバックアップできます。また、贈与の納税猶予を受けた後、相続税の納税猶予を連続して受けた場合、この従業員の雇用維持要件は必要ないのです。贈与税の納税猶予を適用し、5年間の雇用維持要件を満たせば、相続の時は雇用維持要件を満たす必要はありません

11.贈与税の納税猶予の最大のデメットはなにでしょうか?

贈与税の納税猶予適用後、何らかの事情で要件を満たさなくなった場合は、贈与税の猶予税額は暦年課税方式による高い累進税率で課税されるため高額の贈与税を負担することになります
また、贈与税の納税猶予適用後、相続税の納税猶予の適用を受ける場合、贈与株式の価額は贈与時の価額となるため、贈与時の株価が下落している場合は、結果的に割高な相続税の負担がかかるケースがございます。

よくある事例とその解決策に戻る
ページトップへ
資産税コンサルティングに戻る