ホーム 藤井会計事務所サービス一覧 歯科経営コンサルティング 資産税コンサルティング 経営コンサルティング

●よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)

Q1.「矯正歯科医院の事業継承が他の医科・歯科医院と比べて対策が必要な理由は何ですか?」

A.矯正歯科医院特有の事業承継の課題となっているからです。

一番の課題の返金(前受けで受領している未治療部分の治療料の返金)は重大な課題となっております。

矯正の治療は個人差があると思われますが、治療に2年から3年間、保定に2年から
3年間かかる為、長期期間の治療が必要です。
一方、治療費の受領につきましては一括または1年くらいの間にほとんどの治療費を受けることが慣行となっております。
その為、廃業する場合は返金(前受けで受領している未治療部分の治療料の返金)を負担する必要が生じます。

①返金の額が多大。(負担しないとトラブルの発生要因となります)
②引き継ぎ患者が多く廃業した場合の転医先がみつからない。
(数件ならともかく治療費が前受けされているため、移転先の医院は割が全く合いません)
③親族以外に売却したいが相手先が矯正歯科医院に限られてしまう。ここが一般の歯科医院と相違するところです。
④ほとんどが自由診療のため前院長の売上を維持できるのか不安に感じる。
⑤引継ぎ先が、前院長の治療方針を初め、過去の治療経緯など承継につき不安に感じる。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q2. 「返金についてもう少し詳細に説明ください」

A.まず矯正治療契約の法的な位置づけですが、多々意見の分かれるところですが、一般的には、仕事の完成を目的とする請負契約ではなく準委任契約と考えられます。したがって全額を返す必要はなく、未治療部分の返還でよいということになります。
仮に請負契約と位置づけられますと、治療途中に閉院した場合には治療終了前に受け取った治療費の全額を返還すべきこととなってしまいます。
東京地方裁判所にて、平成13年2月26日にあった判決でも同様なことを言っています。またこの裁判では矯正治療契約の解除により、未治療部分の治療費の返還は認められるかといったまさしく返金のことについて判決がございました。
この事案では保定の段階で患者からの契約解除をしたという事案でした。
裁判所の判断は「歯列環境を整えるための矯正については、ほぼ履行を終えたが、矯正の結果を保持するために必要な後戻り防止のための処置(保定)は終了しておらず、後戻りが生じている点を考慮し履行の割合に応じて取得することができる報酬は、既に受け取っている治療費の8割が相当」と判断されました。

このような判決からも、治療途中の閉院をした場合は少なくても全額返還することまでは要求されませんが、未治療部分の返金が生じることは明らかとなりますので、矯正歯科医院の事業承継の対策が必要な理由です。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q3. 「"廃業した場合に転医先が見つからない"についてもう少し詳細に説明ください」

A.治療期間が長いため引き継ぐべき患者数が多い

矯正歯科医院の事業承継における廃業には、ある程度予定を立て3年から5年をかけて廃業するケースと不幸な事故等により廃業する場合がございます。
ただし、治療期間が長期に及ぶ為、売上の規模にもよりますが、前者のケースでも保定患者を含めると100人から200人、後者にいたっては500人から1000人くらいの継続治療の患者がおります。このように、どちらのケースでも多人数の患者の転医先の引き受け先を見つけるのは至難の業だからです。
さらに治療費が前受けされているため、治療未経過にかかる治療費を患者に返金または引継ぎ先の医院に精算等しないと引継ぎ先の医院は割が全く合いません。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q4.「診療所の後継者の不在率はどれくらいしょうか?」

A.おおよそ下記の割合となっております。
矯正歯科医院のデータではございませんが、他の業種より、歯科・医科の診療所は、後継者の不在率が非常に高くなっております。

・平均不在率64%
・無床診療所(歯科医院以外)60%
・歯科診療所 70%

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q5. 「矯正歯科医院における承継に伴う選択肢はどのようなものですか?」

A.おおよそ5つに分かれます。承継問題は早い段階で5つの選択肢のそれぞれの課題を洗い出し、早期に解決していく必要があります。

①医院を廃業する
1.予定をきちんと立てて廃業する場合。
2.偶発的な事故・急な病気等による死亡により廃業せざる得ない場合

②親族を含めた第3者への承継をする
3.偶発的な事故・急な病気等による死亡による親族への承継をする場合
4.偶発的な事故・急な病気等による死亡による第3者への承継をする場合
5.生前にきちんと計画を立てて、第3者または親族に承継する場合

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q6. 「事前の対策はどのようなものがあるでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項が考えられます。

①計画をたてて返金相当額の貯金と返金を減らす戦略をたてる。
②万が一の偶発的な事故・急な病気等に備え、転医先の診療所の確保をする。
(できれば一件でなく数件。また、お互いに矯正歯科医院同士、転移先になることも万が一の備えになる。)
③診療所を廃業せざるを得ない場合に備え借入金およびリース残債、賃借している場合は原状回復費用など診療所の廃業時にかかる資金の準備をする。
④診療所を廃業せざるを得ない場合に備え従業員の退職金の準備をする。
⑤診療所を廃業せざるを得ない場合に備え自分たちの老後資金の準備をする。
⑥万が一の偶発的な事故・急な病気等に備え、医院の廃業または承継を選択する際のマニュアルの作成の準備をする。
⑦親族以外の場合に承継を考えている場合は医院の名前の変更をする。
⑧親族も含め、第3者へ承継する場合、診療所の耐久性を考え、移転の準備をする。(老朽化している場合)
⑨個人診療より承継が容易になる医療法人の設立をする。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q7. 「予定をきちんと立てて廃業する場合に注意することはどういったところでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項が考えられます。

①予定を立てて、返金相当額の貯金と返金を減らす戦略をたてる。
②予定を立てて、転医先の診療所の確保を図る。できれば一件でなく数件。また、お互いに矯正歯科医院同士、転移先になることも万が一の備えになる。
③上記①の返金減らすこと②の転移先の医院の確保にもつながりますが、予定を立てて、新患者をとらない工夫が必要であり、おおよそ3年から5年は必要と思われます。出来れば継続患者を100件以下、理想は50件以下とする。また、売上がかなり減少するのに対して、固定費の捻出が難しくなります。(家賃・人件費を引き下げづらいと思われますが、家賃交渉をしたり、スタッフを社員からアルバイトに変更する必要があります。)
固定費が低いことが要件になりますので、家族経営の診療所や家賃の負担のない自宅併用の診療所ですとスムーズに行くケースが多いです。
④予定を立てて、廃業時のリース及び借入金の残債を清算するための資金、原状回復費用が預けた保証金を超えた場合に必要な資金の準備をする。
⑤予定を立てて、廃業時に必要な退職金の資金の準備をする。
廃院が近づくにつれて、スタッフのモチベーションや継続勤務が困難になることもありますので割増的な退職金も必要かもしれません。
⑥予定を立てて、個人診療の場合は老後資金を、医療法人の場合は退職金の原資を蓄積する必要があります。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q8. 「偶発的な事故・病気等による死亡により廃業せざるを得ない場合に注意することはどういったところでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項が考えられます。

①遺族が治療未経過の治療費については患者に返金する必要があります。
②転医先の診療所の確保が必要です。
(継続患者の数にもよりますが、数件の転移先が必要なことが多いです)
③偶発的な事故・急な病気等に備え、医院のスタッフや家族に医院の廃業または承継を選択する際のマニュアルの作成の準備をします。特に親族の中に後継者候補が存在しない場合は必至です。実際は作成することは稀ですが、万が一の偶発的な事故・急な病気等の際に非常に役に立ちます。
④廃業時にリース及び借入金の残債を清算する必要があります。
⑤事務処理・患者対応から死亡後の当面の期間につき、人件費等の支払が生じます。
⑥廃業時に従業員の退職金が必要になることがあります。
⑦廃業時に原状回復費用が預けた保証金を超えた場合に負担が生じます。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q9. 「偶発的な事故・病気等による死亡による親族への承継の場合の注意することはどういったところでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項が考えられます。

①(生前戦略として)生前承継として開設者、管理者の変更を行います。診療所が自己所有の場合で、名義を移転できない場合は、賃貸借契約を承継者と締結いたします。ポイントは家賃をきちんと支払う賃貸借契約を結ぶことです。無償の使用貸借では、契約期間終了後に無条件で立ち退きをする可能性も多々あるからです。また、不動産以外の医療機器等は承継者に売買または贈与の手段を使って移転いたします。
②(生前戦略として)医療法人を設立することも考えます。資金に余裕があれば診療所を法人名義にすることも視野に入れます。
③(生前戦略として)相続税の負担軽減として平成19年3月以前の医療法人をお持ちの方は、出資持分を生前に後継者へ贈与いたします。
④(生前戦略として)診療所を所有している場合は、後継者に遺言にて指定することを考えます。
⑥(死亡時)後継者がご子息の場合は、相続税の負担と争続が大きなテーマとなります。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q10. 「偶発的な事故・病気等による死亡による第3者への売却・承継の場合の着目点はどういったところでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項が考えられます。

①売却できず廃業せざるを得ない場合も想定されますので、返金の準備と減額の準備が必要です。
②売却できず廃業せざるを得ない場合も想定されますので、転医先の診療所の確保が必要です。できれば一件でなく数件。また、お互いに矯正歯科医院同士、転移先になることも万が一の備えになる。
③売却できず廃業せざるを得ない場合は、リース及び借入金の残債を清算する必要があります。
④売却できず廃業せざるを得ない場合も、スタッフに対して退職金が必要になることもあります。
⑤売却できず廃業せざるを得ない場合も、原状回復費用が預けた保証金を超えた場合は支払が必要になります。
⑥医院のスタッフや家族に医院の廃業または承継を選択する際のマニュアルの作成の準備をします。なかなか作成することは稀ですが、万が一の偶発的な事故・急な病気等の際に非常に役に立ちます。
⑦医療法人化を検討します。個人診療と比較して管理者と開設者が別となりますので、経営と医療の区別ができ、選択肢が増えます。
⑧第3者への承継となりますので医院名の変更を、計画を立てて行います。(個人名より一般名称の方が引継ぎ者は承継しやすくなります)
また、承継後おおよそ20年は診療ができる必要がありますのでビルの耐久性を検討し、計画を立てて診療所の移転も視野に入れます。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q11. 「生前にきちんと計画を立てて第3者又は親族に売却・承継の場合の着目点はどういったところでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項が考えられます。

①売却できず廃業せざるを得ない場合も想定されますので、返金の準備と減額の準備が必要です。
②売却できず廃業せざるを得ない場合も想定されますので、転医先の診療所の確保が必要です。できれば一件でなく数件。また、お互いに矯正歯科医院同士、転移先になることも万が一の備えになる。
③売却できず廃業せざるを得ない場合は、リース及び借入金の残債を清算する必要があります。
④売却できず廃業せざるを得ない場合も、スタッフに対して退職金が必要になることもあります。
⑤売却できず廃業せざるを得ない場合も、原状回復費用が預けた保証金を超えた場合は支払が必要になります。
⑥医療法人化を検討します。個人診療と比較して管理者と開設者が別となりますので、経営と医療の区別ができ、選択肢が増えます。
⑦第3者への承継となりますので医院名の変更を、計画を立てて行います。(個人名より一般名称の方が引継ぎ者は承継しやすくなります)
また、承継後おおよそ20年は診療ができる必要がありますのでビルの耐久性を検討し、計画を立てて診療所の移転も視野に入れます。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q12. 「清算金はどのようにして減らせばよいですか?」

A.治療費のもらい方を変更いたします。できれば2年から3年くらいに分けて受け取るか、治療費を保定とそれ以外で分けてもらうことも考えたほうが良いかもしれません。ただし、今まで一括で受け取っていた矯正歯科医院が、2年から3年の分割払いに変更するとかなり資金繰りが悪化すると思われます。その為、運転資金として融資を受ける必要があるかもしれません。下記の表をご参照ください。

「清算金はどのようにして減らせばよいですか?」PDF
※画像をクリックするとPDFファイルで開きます。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q13. 「万が一の緊急時のマニュアルはどのように作成すればよいでしょうか?」

A.緊急時ですので、院長の突然の死亡・事故があった場合に、残された診療所のスタッフまたは家族が路頭に迷わないように、緊急時のマニュアルを作成しておく必要がございます。特に親族の中に後継者候補が存在しない場合は、残された遺族とスタッフが中心に対応する必要があります。

①院長の希望等
1)院長の意志について
→診療所の承継(売却)または閉院かの選択を決めます。
1.閉院の場合は、転医先の確保と自由診療の返金の用意が必要となります。
2.承継は、おおよそ死亡等後から2ヶ月から3ヶ月、長くても6ヶ月を目安に承継を完了させることを目標とします。

2)緊急時の役割について
→緊急時の対応方法をスタッフ及び家族に伝え、役割分担を決めておきます。
1.役割分担を決めます。
(診療担当・協力歯科医院への対応担当、院内事務担当・転医先への対応担当・葬儀等)
2.連絡先を記載した用紙を用意します。
(歯科医師会・協力歯科医院先、転医先・M&A業者・税理士・弁護士・その他)

3.患者への連絡についての指示をいたします。
・死亡後その先2週間~4週間の予約を電話にて全てキャンセルするようにします。
・お詫び・今後の対応については決まり次第報告する旨を伝えることとし、同内容を院内、院外に掲示いたします。
・応急処置は通常通り当医院(代診医がスタッフに在籍する場合)にて治療するか、協力歯科医院を用意し、その医院にて対応するようにします。
*緊急時の応急処置に協力していただける歯科医院を、計画を立てて用意しておく必要があります。
4.葬儀等の参列後の対応方法の指示をいたします。
・葬儀等以外は、当院にて通常の勤務時間に少なくても数名にて待機し、事務処理・電話処理など患者対応を行います。(1週間から2週間程度)

3)診療の再開について
a.廃業を選択する場合  
・転医先を患者に紹介します。その際、未治療にかかる自由診療の返金についても相談します。
b.第3者への承継(売却)の場合
・承継先が決まるまで、当面(2ヶ月から6ヶ月)の間、当院(代診医がスタッフに在籍する場合または協力歯科医師に来院して頂く)または協力歯科医院で診療を行います。
・院内掲示にて院長死亡の説明及び詫び状を掲示し、今後の対応の詳細は決まり次第伝えるようにいたします。新規患者は取りません。従って、新患・相談・診断は、承継先が決定するまでは保留または協力先の診療所へ紹介いたします。
※個人診療所ですと、原則、管理者不在の状態で死亡後、第3者が診療を行うことは、事実上不可能となります。管理者不在が相当期間続く場合は管轄保健所にご相談ください。
(医療法上、第3者が治療を行うことは開業を意味いたしますので、事実上不可能となります)
※法人の場合は、管理者の変更により当面の治療を行うことは可能となります。
※どちらにしても協力歯科医院が必要となります。

4)承継条件について
→下記の1~6を交渉・準備する必要があります。
1.売却金額について
・市場はないため決められた金額はございません。
・M&A業者、顧問税理士に相談し、売買価格を決めます。
2.従業員の雇用継続について
・M&A業者、顧問税理士に相談し、承継先と解雇または継続を交渉ください。
3.従業員の退職金の清算について
・M&A業者、顧問税理士に相談してください
・解雇の場合は退職金の支払が必要となります。
4.借入金の清算について
・M&A業者、顧問税理士に相談してください
・(個人診療の場合)原則、承継時に清算いたします。清算に必要な資金は○○生命の死亡保険金または〇〇銀行より支払うこと。
・(法人診療の場合)原則、清算する必要はございません、M&A業者、顧問税理士に相談し、承継先と交渉ください。合わせて連帯保証人を外す交渉を銀行と行ってください。
5.リース債務の清算について
・M&A業者、顧問税理士に相談してください
・(個人診療の場合)原則、承継(売却)により清算いたします。
・(法人診療の場合)原則、清算する必要はございません。合わせて連帯保証人を外す交渉をリース会社と行ってください。
6. 院内システムの承継について 
・院長の万が一の際も医院のカルテ・医療器械・重要書類の管理・医院の自由診療のシステム(無料相談・診断・説明・治療の流れ・スタッフの接遇など)の説明をできるように体制をつくる必要があります。
こちらは計画を立ててスタッフに熟知してもらう必要があります。
5)承継(売却)できなかった場合について
1. 転医先を患者に紹介します。その際、未治療にかかる自由診療の返金についても相談します。
2.従業員の退職金を必要な場合は支払います。
3.リース債務・借入債務の清算を行います。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q14. 「閉院する場合の金銭的な備えはどうすればよいでしょうか?」

A.下記の金額を用意する必要があります。

・清算費用(清算金・退職金・原状回復費用・借入金及びリースの残債)

①個人診療の場合
解約返戻金の多い終身保険(年金目的にも使える)
逓減定期保険(保険料の節約のため

②法人診療の場合
退職金目的(解約返戻金の多い)逓増定期保険
退職金目的(解約返戻金の多い)長期平準定期保険

③生前の場合
老後の生活資金

④死亡に伴う場合
遺族の生活資金
*経費性が高いもの

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q15. 「清算費用等を生命保険から調達する場合、個人診療所と法人診療所では税の取り扱いに違いがありますか?」

A.法人診療所と個人診療所で清算費用等に備えて、生命保険に加入した場合の比較を説明したいと思います。法人の方がリスクを節税でカバーできることがわかると思われます。

※前提①死亡保障3,000万
②年間保険料150万(支払金額の内、法人の経費に1/2相当額が算入可とします)
③15年後の解約返戻金2,250万
④必要な清算金2,500万

■加入後15年後に、死亡事故により清算金の支払をした場合

①個人診療
・生命保険の加入により、毎年生命料控除を受けることによる節税が可能となります。
40,000円×0.5%(税率)×15年=300,000円(節税概算額)
・死亡保険金は相続税の対象ですが、清算金は債務控除できると思われますので多くの場合で税金負担は生じないと思われます。
・また、死亡年の確定申告において、清算金は経費に算入可となります。その効果は、その年の所得が2,500万以上であれば、
25,000,000円×15%~50%(税率)(節税概算額・所得がなければ効果なし)

②法人診療
・生命保険の加入により、毎年保険料のうち一定額が経費算入になることによる節税が可能となります。
1,500,000円×1/2×0.35%(税率)×15年=3,937,500円(節税概算額)
・死亡保険金は法人税の対象となりますが、清算金が経費に入りますので多くの場合で税金負担は生じないと思われます。

■清算金の支払いの必要がなく、加入後15年後に生命保険の解約した場合

①個人診療
・生命保険の加入により、毎年生命保険控除を受けることが可能となります。
40,000円×0.5%(税率)×15年=300,000円(節税概算額)
・解約返戻金は所得税の対象ですが、解約返戻金が支払保険料を超えることはほとんどございませんので、多くの場合で税金負担は生じないと思われます。
②法人診療
・生命保険の加入により、毎年保険料のうち一定額が経費算入になることによる節税が可能となります。
1,500,000円×1/2×0.35%(税率)×15年=3,937,500円(節税概算額)
・解約返戻金を個人に移すために退職金を支払った場合は、所得税・住民税を支払う必要があります。
(22,500,000円△400,000円×15年)×1/2×0.33%△636,000円=2,086,500円(住民税含む)
(納税概算額)
・解約返戻金は法人税の対象となりますが、退職金が経費に入ります。その効果は、
22,500,000円△(22,500,000円△1,500,000円×1/2×15年)=11,250,000円
11,250,000円×0.35%(税率)=3,937,500円((節税概算額)

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q16. 「第3者承継(売却の形態)はどのようなものがありますか?」

A.おおよそ下記のものが想定できます。

①診療所を売却いたします。

・売主側は個人診療所または医療法人となります。一方、買主側は個人診療所または既存の医療法人の分院が想定できます。ただし、医療法人の分院は都道府県の認可制となっているため買取りスケジュール等が必要になります。

②医療法人の理事長等及び社員(株主)の変更により売却いたします。

・売主が旧医療法人(認可が平成19年3月31日以前)の場合は、理事長・理事・監事・社員(医療法人でいう株主)の変更と出資持分の譲渡を行います。
・売主が新医療法人(基金拠出型医療法人)(認可が平成19年4月1日以後)の場合は、理事長・理事・監事・社員(医療法人でいう株主)の変更と基金の払い戻しを行います。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q17. 「第3者承継(売却)の売側のメリットはどのような点でしょうか?」

A.おおよそ下記のものが想定できます。特に①と②が大きいと思われます。閉院は転医先を確保するにしても患者からのクレームになることもあるからです。

①患者の引継ぎができる(転移先の医院を探す必要がない)
②自由診療にかかる未治療にかかる治療費の返金がなくなる
③診療所にかかる銀行融資の残債、リースにかかる残債の負担が無くなるまたは減少する
④老後資金ができる
⑤条件によっては非常勤として継続勤務も可能となる

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q18. 「第3者承継(売却)の購入側のメリットはどのような点でしょうか?」

A.おおよそ下記のものが想定できます。特に①が大きいと思われます。通常の開業の場合は開業してから売上の安定するまので期間は3年くらい必要だからです。

①新規開業の売上等のリスクを回避でき、当初から売上が見込める
②長年蓄積された医院のシステムが承継できる
③熟練されたスタッフを引き継げる
④地域の患者評価を引き継げる

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q19. 「第3者承継(売却)の購入側の不安はどのような点でしょうか?

A.おおよそ下記のものが想定できます。特に①が大きいと思われます。矯正は原則自由診療であるため、院長の力量にかかるウェイトが高いところがあるからです。

①うまく売上を承継できるか不安である
②前医院のシステムをうまく引き継げるか
③前経営者と比較されないか
④紹介患者も承継できるか
⑤患者が、院長が変わってどう感じるか
⑥スタッフから信頼を得ることができるか
⑦簿外債務や過去の治療の瑕疵によるクレームがないか
⑧売却金額の算定根拠が不明
⑨前院長の治療方針を初め、過去の治療経緯など承継につき不安に感じる。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q20. 「事業承継で医療法人が有利・不利に機能するところはどういう点ですか?」

項目

個人診療の場合

医療法人の場合

着目点

管理者死亡後の診療所の再開

開業手続後の開始は可能

役職の変更で対応可

死亡後、譲渡するまでの当面の間、個人診療では事実上診療不可

病気や怪我等による当面の診療所での診療

長期の場合は休業又は廃業

役職の変更で対応可

個人診療の場合、長期の休業は再開時に売上が元に戻らない事も・法人は勤務医を管理者にすることが可能なため継続可能

院長(管理者)を継続したままでの譲渡(管理者以外の第3者)

不可

可能

法人の場合は、勤務医を管理者にしたまま当該勤務医又は第3者に承継可能

承継時の管理者の変更

廃業と開業を意味する

役職の変更で対応可

個人診療は事務が複雑(賃貸借契約を再度締結する必要等あり)

管理者の死亡

廃業を意味する

役職の変更で対応可

 

承継後の給与収入

原則なし

給与あり

法人の場合、承継後も理事として残り給与の支給を受けることは可能

承継時のリース契約

原則清算する必要あり

引き継ぎ可能

債務者が法人の為(連帯保証人の変更は交渉する必要あり)

承継時の借入金

原則清算する必要あり

引き継ぎ可能

債務者が法人の為(連帯保証人の変更は交渉する必要あり)

承継後の賃貸借契約

再度締結

継続

個人診療の場合はオーナーの承諾が得られない可能性あり

承継時の従業員

原則解雇

継続

個人診療は原則、退職金の清算の必要あり

医療法人が事業承継に有利に働く事例

■事例1 死亡後1年後に売買契約が成立した場合
個人診療所では管理者が死亡した場合、第3者承継を考える場合、診療所では承継者が決まるまで当面の治療を行うことができません。この事例では承継者が決まったのが死亡後1年を経過した後であったため売上の見込みが立たず、売却金額はかなり低い金額となってしまいました。
この事例に対しては医療法人を設立し、管理者が死亡された場合は、第3者の承継者が決まるまでの当面の間は勤務医を管理者にすることにより診療の中断を防げますので、売上の見込みが立ち売買金額の劣化を防げます。

■事例2 大きな事故等により休業後、2年後に売買契約が成立した場合
個人診療所では管理者が怪我等した場合、長期にわたる場合は休業か廃業を選択することになります。怪我等の完治後、診療を再開する場合でも休業期間が長期にわたる場合は、売上の見込みが立たないことも考えられます。また不運にも怪我等の状況により再開出来ない場合は第3者承継を考える必要があります。そのため休診期間が長期に及ぶと売上の見込みがたたず、第3者承継が難しくなることもありえます。

このように個人の診療所では管理者の長期の不在等の場合は治療の継続ができません。一方、医療法人の場合は、怪我等の完治するまので間、管理者を変更することにより診療の中断を防ぐことができます。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q21. 「税金で医療法人が有利・不利に機能するところはどういう点ですか?」

項目

個人診療の場合

医療法人の場合

着目点

税金

所得税・住民税・事業税

法人税・住民税・事業税

個人は最大55%・法人は40%くらい

生命保険

年間12万円の所得控除

一定の定期保険は経費化可能

法人の場合はリスクを節税で補填可

税金の特典

青色申告特別控除65万

給与所得控除として最大245万

相続税

他の財産と合わせて課税

医療法人としての資産はかからない

新医療法人のみ相続税なし(解散時に没収の為)

承継時の税金

営業権による譲渡
(利益の1/2課税)

旧医療法人であれば出資持分の譲渡が可能・新医療法人は基金以外の部分は退職金課税など対応

法人診療所の売却の場合は利益の40%が税金

院長(事業主)への退職金

支給できない

支給できる

老後の資金・住宅ローンの返済

同居する家族への給与

妥当金額のみ

支給できる

個人診療の場合より高い金額の支給可

同居する家族への退職金

支給できない

支給できる

老後の資金

開業申請

届出

認可制

医療法人の認可は年2回のみ

厚生年金

5人以上(院長は不可)

院長も含め常勤者

人件費の約8%の負担

健康保険

5人以上(院長は不可)

院長も含め常勤者

人件費の約5%の負担

歯科医師国保

加入可

加入可

法人の場合は個人時代から加入している場合のみ可能

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q22.「親族(ご子息)承継で問題になるケースはどういった事例がありますか?」

■事例1 診療所を所有している場合で遺産分割がまとまらない場合

診療所の所有者及び管理者が父親のケースで診療所の遺産分割がまとまらない場合は、相続開始後の事業承継が難しくなります。個人診療の場合は死亡に伴う管理者の変更は開業を意味いたしますので、開業届けに診療所を所有している場合は登記簿謄本を、そうでない場合は賃貸借契約書を添付する必要がございます。そのため遺産分割がまとまらない場合は、所有者全員=共同相続人全員の承諾を得ていることがわかる書類が必要になるかと思います。
原則としては、相続人全員と賃貸借契約を締結する必要がございますが、各々の相続人の承諾書という形でも認める保健所もあるようです。
対処方法としては、
①診療所を承継者である子に指定した遺言書の作成をいたします。
②生前に管理者を変更し、診療所につき父と子の間で賃貸借契約(父死亡後も家賃の金額等の条件は変わる可能性もありますが賃貸借契約は継続できます)を締結する。
③医療法人を設立し、診療所を医療法人が買い取る形をとります。

■事例2 相続税の負担が大きく承継が難しい場合

まず相続税の負担額の試算をする必要があります。節税の代表例としては、小規模宅地等の軽減の利用と医療法人による診療所の買取り、出資持分の承継者への贈与があげられます。

①診療所の承継で相続税の節税の代表例で小規模宅地等の特例

この特例が、原則相続税の申告期限までに遺産分割協議を成立させる必要がございます。下記が内容の概要となっております

(特定事業用宅地等)
a.相続後、承継者が診療所を相続し診療所を承継すれば、400㎡までの宅地については80%の評価を下げることができます。
b.生前に、承継者に管理者を変更し診療所を相続すれば、400㎡までの宅地については80%の評価を下げることができます。(この場合、承継者は宅地の所有者と生計を一(原則同居)にしていないと、この特例は受けられません)

(特定同族会社事業用宅地等)
a.対象は旧医療法人(平成19年3月以前設立)のみとなりますが、医療法人に宅地のみ賃貸するか、診療所(宅地及び建物)を賃貸し、承継者が宅地または診療所を相続した場合は、400㎡までの宅地については80%の評価を下げる事ができます。

②医療法人による診療所の買取り

個人診療所では診療所(不動産産)は当然として診療所の拡大・長期の営業努力による内部留保、言い換えれば預貯金等に対して相続税を負担する必要があります。相続税は毎年増加していくことに繋がります。一方、新医療法人(基金拠出型医療法人)は、設立時の基金は債権と考えられ、医院の業績とは関係なく券面額のみを相続税の対象となりますので、相続税の負担を最小限に抑えることができます。つまり、以前の医療法人にように内部留保を通じた出資持分の価値増加に伴う相続税の負担がございません。従いまして法人診療所の拡大や長年の営業によって相続税は毎年増加していくことは一切ないことになります。このように新医療法人は持分の定めがないこと、医院閉鎖時(解散時)の残余財産の国等への帰属、内部留保に伴う相続税の負担がないことが特徴となります。
事業承継を確実にしていく意志のある個人診療所は、法人形態にすることにより相続税の心配なしに継続して医院経営を行うことができると思われます。
また、個人名義の診療所を医療法人が買い取った場合、買取後の地価の上昇に伴う相続の増額等の心配は必要なくなります。(もっとも診療所の旧所有者は不動産から現金に変わりますので、その現金が相続時までに貯蓄されている場合は、その現金に対しては、相続税はかかってしまいます)

③医療法人の出資持分の価額が上昇して相続税の負担が重い場合

平成19年3月以前に設立された医療法人は出資持分があり、診療所の拡大や長年の営業によって出資持分の価額は上昇し、相続税は毎年増加していくことにつながります。一方、平成19年4月以降設立の持分の定めのない医療法人(以下新医療法人)は、持分の定めがないこと、医院閉鎖時(解散時)の残余財産の国等への帰属が大きな特徴で、診療所の拡大や長年の営業によって出資持分の価額は上昇し相続税が毎年増加していくことはありません。
この出資持分のある医療法人を新医療法人への変更は可能ですが、理事の親族の占める割合、理事報酬の占める割合等、規模の規定、自由診療収入の割合を満たさない限り、莫大な贈与税が個人とみなされた医療法人の負担となり移行はかなり難しいと思われます。
その為、理事長の退任時に退職金を支払い、出資持分の評価を大幅に下げて後継者に譲渡いたします。この方式をとっても多大な贈与税が算出される場合は、相続時精算課税制度を利用し贈与税の圧縮をはかります。
※相続時精算課税制度の概要
贈与者の年齢が65歳以上の場合、相続人に対する贈与税については2500万円を超えた金額の20%の納税で可能となります。

■事例3 承継者(ご子息)と承継問題を話す機会が少なく、些細なことから承継問題に失敗した場合

医科・歯科に問わず、医術の教授をうける年代の相違・大学の相違・教授の相違・卒業後の臨床医院の相違から親子といえども意見の相違が顕著になることもありえます。親の気持ちもなかなか伝わらないことも多々あると思われます。
顕著な意見の相違がないにもかかわらず承継の話をなかなか切り出せないこともありえます。その際に医療法人の設立を機にきちんと親子で話し合うのもよいかもしれません。
医療法人とは、まさしく事業承継であり、理事の決定・社員の決定でもありますので、同じ診療所に勤務していないにしても、将来の事業承継のことや医院経営の話し合いの場になることは間違いないと思われます。

■事例4 不幸な事故等により、承継者(ご子息)が大学に入ったばかりで承継に失敗した場合

個人診療所では管理者の死亡は医院の廃業となります。そのため承継者がいるにもかかわらず、不運な事故等による場合は廃業となり、承継に失敗することもありえます。こういった事例に対応するために医療法人であれば、管理者の変更を行うことによって承継者が大学等を卒業するまでの当面の診療所での治療の継続が可能となります。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q23.「第3者承継(売却)で問題になるケースはどういった事例がありますか?」

■事例1 死亡後1年後に売買契約が成立した場合

個人診療所では管理者が死亡した場合、第3者承継を考える場合、診療所では承継者が決まるまで当面の治療を行うことができません。この事例では承継者が決まったのが死亡後1年を経過した後であったため売上の見込みが立たず、売却金額はかなり低い金額となってしまいました。
この事例に対しては医療法人を設立し、管理者が死亡された場合は、第3者の承継者が決まるまでの当面の間は勤務医を管理者にすることにより診療の中断を防げますので、売上の見込みが立ち売買金額の劣化を防げます。

■事例2 大きな事故等により休業後、2年後に売買契約が成立した場合

個人診療所では管理者が怪我等した場合、長期にわたる場合は休業か廃業を選択することになります。怪我等の完治後、診療を再開する場合でも休業期間が長期にわたる場合は、売上の見込みが立たないことも考えられます。また不運にも怪我等の状況により再開出来ない場合は第3者承継を考える必要があります。そのため休診期間が長期に及ぶと売上の見込みがたたず、第3者承継が難しくなることもありえます。
このように個人の診療所では管理者の長期の不在等の場合は治療の継続ができません。一方、医療法人の場合は、怪我等の完治するまので間、管理者を変更することにより診療の中断を防ぐことができます。

■事例3 売買契約が成立したものの、買主の一方的な都合でキャンセルされた場合

売買契約の成立後、引渡しまでに売主・買主の都合により契約を破棄した場合は、違約金を徴収できる事項を契約書に載せていたら防げた事例かもしれません。
違約金の金額ですが最低500万または売買金額の30%といった割合をいれたほうが無難と思われます。

■事例4 売買契約が成立したものの、買主の資金的な理由(融資の不成立)でキャンセルした場合で、違約金の支払で買主ともめた場合

もちろん契約日までに、銀行に融資について前もって承諾を得るのが通常ですが、なんらかの事情により承諾が解除になることも稀にあります。そのため売買契約の成立後、引渡しまでに売主・買主の都合により契約を破棄した場合の違約金を徴収できる事項の例外規定を設ける必要があります。下記の事項を載せると良いかもしれません。

①甲または乙の死亡
②甲または乙の突発的な事故による重負傷
③火災や地震等の自然災害による当該建築物の崩壊
④乙の融資の不成立
⑤①から④に類する事項

■事例5 承継先のビルに耐久性の不安があり、第3者承継に失敗した場合

業績も良くスタッフの教育もすばらしい診療所であっても、診療を行うビルの耐久性に問題があった場合は、なかなか承継がうまくいかないこともありえます。
診療所の立地は業績にかなりの影響を与えます。そのため承継側はできれば10年から20年はその診療所で経営を継続する算段にて買取り等を考えると思われます。そのため承継後においても20年前後は継続できるビル等が望ましいと思われます。

■事例6 承継先の診療所の名称の問題で、第3者承継に失敗した場合

承継側の不安要素の大部分は旧診療所の売上等を引き継げるかにあります。そのため医院の名称が旧院長の苗字であることが承継側にとってデメリットとなることもありえます。承継後の患者が、承継後の診療所の名称変更後にどういった印象をお持ちになるでしょか?その点を承継側が心配した事例です。
承継問題で既存の診療所名を変更することはとても勇気のいることと思われます。苗字であるがために患者からの信頼が高いということもありえるからです。しかし、だからこそ承継側も逆に不安に感じる要素であることを理解する必要があるかもしれません。少なくても承継の前2年から3年前には名称変更を考えたほうがよいかもしれません。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q24. 「医療法人の出資持分を譲渡する際の手順はどのようになりますか?」

①経営権譲渡に関する覚書の締結(譲渡対価の決定・支払い方法等の決定)
②出資持分の譲渡契約締結
③新社員の入社及び今までの社員の退社の承認に関する臨時社員総会開催
④旧理事・監事の退任に伴う新理事及び新監事選任に関する臨時社員総会開催
⑤旧理事長の退任に伴う新理事長選任に関する理事会開催
⑥出資持分の譲渡

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q25. 「医療法人の出資持分を譲渡する際に作成する覚書きはどのように作成すればよろしいでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項を記載いたします。

藤井和哉(以下甲という。)とA(以下乙という。)は、医療法人社団藤井会(以下丙という。)の経営権の譲渡についてこの覚書を作成し、次の諸項目について合意する。
(取引の内容)
1 甲は、丙(所在:東京都千代田区神田神保町1-40)の経営権を乙に譲渡することを約し、乙はこれを譲り受けるものとする。
(出資持分の譲渡の形態)
2 丙の経営権を譲渡するため、次の取引を行う。
丙の出資持分については、甲がその責任において、出資持分譲渡の日までに乙に譲渡するものとする。
甲と乙は、丙の経営権譲渡に関する法形式等を検討のうえ、その都度、必要な手続を行うものとする。また、丙所有の財産並びに許認可届出書類、帳簿書類、印鑑など経営に必要な一切の引継ぎは出資持分の譲渡の日に行う。
(出資持分の譲渡の日)
3 2に定める出資持分の譲渡日は平成  年  月  日とする。
(経営権対価)
4 1に基づく経営権の対価は、平成  年  月  日現在の丙の試算表(別添)を前提として定めるものとする。なお、平成  年  月  日までの試算表数値の主要な変動(合理的に予測される将来の変動を含む。)は、これを経営権の対価算定に加味するものとする。最終的な経営権の対価については双方協議のうえ、平成  年  月  日を目途として定めるものとする。

(従業員)
5 丙の医師、歯科衛生士、事務職員その他従業員については、原則として現行の職員・労働条件等を継続するものとする。
(守秘義務)
6 乙は調査により知り得た事柄について守秘義務を負い、故意に又は不用意に第三者に対して情報漏洩を行った場合、乙は損害賠償義務を行う。なお、取引不成立時には甲及び丙の提供したすべての資料を返還するものとする。
(善管注意義務)
7 本覚書取り交わし以後、1の取引が完了するまでの間、甲は従前通り善良なる管理者としての義務を負う。
(丙の債務等に係る契約)
8 将来、丙が税務上の更正処分等を受けて納税義務その他の債務を負担することとなった場合、簿外の債務の存在が明らかになった場合、その原因が平成  年  月  日以前に存するときは、甲はその支払義務を負う。
また、平成  年  月  日時点における引継資産に架空資産があることが事後に判明した場合、甲が同額の補填を行うものとする。
(損害賠償金)
9 甲及び乙は相手側が正当な事由を有することなく、この契約を解除した場合については、第4条の金額の20%相当額である円を損害賠償金として請求することができる。
ここで言う正当な事由とは、下記のことを言う。
①甲または乙の死亡②甲または乙の突発的な事故による重負傷③火災や地震等の自然災害による当該建築物の崩壊④乙による融資の不成立による場合⑤①から④に類する事項
(その他)
10 この覚書に記載のない事項については、甲乙協議のうえ取り決めるものとする。

        平成  年  月  日
甲(住所)東京都千代田区神田神保町1-40
(氏名)藤井和哉
乙(住所)
(氏名)

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q26. 「社員の入退社の承認・新理事及び新監事選任に関する臨時社員総会議事録はどのように作成すればよろしいでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項を記載した社員総会議事録を作成いたします。

臨時社員総会議事録

日時 平成  年  月  日 午前11時00分~午前11時30分
場所 医療法人社団藤井会
出席者 藤井和哉他2名
(本法人社員総数3名のうち3名出席)
本社団定款第23条第1項により理事長藤井和哉が議長となり、定款第24条に定める定足数に達したことを確認した後、午前11時00分開会を宣し、議事に入った。

第1号議案理事選任の件
議長は、理事藤井和哉が辞任したため後任の理事を選任する必要がある旨を述べ、選挙を行った結果、後任の理事として下記の者が選任された。
理事A
第2号議案社員の入社ならびに退社の件
議長は、下記の者より、入社の申し出と退社の申し出があったことを説明し、議場に諮ったところ、下記原案通り満場異議なく承認された。
入社する社員 A
退社する社員 藤井和哉他2名
第3号議案出資持分の譲渡の件
議長は、下記の出資持分の譲渡の申し出があったことを説明し、議場に諮ったところ、下記原案通り異議なく承認された。
1譲渡人 藤井和哉
2譲渡する出資持分の金額      円
3譲受人 A

議長は、以上をもって本日の議案すべてが終了した旨を述べ、午前11時30分閉会した。上記の決議を明確にするため、この議事録をつくり、出席社員が次に記名押印する。

    平成  年  月  日
医療法人社団 藤井会臨時社員総会
議長 藤井和哉      印
社員           印
社員           印

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q27. 「新理事長選任に関する臨時理事会議事録は、どのように作成すればよろしいでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項を記載した理事会議事録を作成いたします。

臨時理事会議事録

日時 平成  年  月  日 午後1時00分~午後1時30分
場所
出席者 藤井和哉他2名
理事総数3名の全てが出席し、平成  年  月  日午後1時00分より理事会を開催した。当理事会において下記議案につき可決確定した。

第1号議案理事長改選の件
理事Aは選ばれて議長となり、理事長藤井和哉の辞任の申し出があったため、後任の理事長を選任する必要がある旨を述べ、選挙の結果、全員一致をもって次のとおり選任した。なお、被選任者はこの就任を承諾した。
理事長A
議長は、以上をもって本日の議案全てが終了した旨を述べ、午後1時30分閉会した。上記の決議を明確にするため、この議事録をつくり、出席社員が次に記名押印する。

   平成  年  月  日
医療法人社団 藤井会臨時理事会
議長 理事長 藤井和哉印
理事         印
理事         印

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q28. 「医療法人の出資持分を譲渡する際に作成する出資持分譲渡契約書は、どのように作成すればよろしいでしょうか?」

A.おおよそ下記の事項を記載した出資持分譲渡契約書を作成いたします。

医療法人社団藤井会出資持分譲渡契約書

譲渡人藤井和哉(以下甲とする。)と譲受人A(以下乙とする。)とは、下記要領にて医療法人社団藤井会(所在:東京都千代田区神田神保町1-40)の出資持分を売買することに同意した。

1 種目 医療法人社団藤井会
2 出資持分の金額      円
3 譲渡価格金      円
4 受 渡 日 平成  年  月  日
5 受渡条件甲が乙に出資持分を引き渡すと同時に、乙は全額を支払うものとする。
上記契約成立の証として、本契約書二通を作成し、甲乙各自記名押印のうえ各々一通を保有する。

        平成  年  月  日
甲(住所)東京都千代田区神田神保町1-40
(氏名)藤井和哉    印
乙(住所)        印
(氏名)        印

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q29. 「医療法人の出資持分を譲渡する際の税金の譲渡側と購入側の税務・融資はどのようになりますか?」

A.下記のようになっております。

①譲渡側の税務

前理事長の退任して出資持分の払い戻しを受けた後、新理事長が同額を出資すべきという考えもあるようです。この場合は出資額を超えた金額は配当扱いとなり最大で50%の所得税等がかかってしまいます。しかし、過去の判例でも定款に反しない限り社員間の出資持分の譲渡は可能とあり、実務的にも多く行われている現実から鑑みれば、有価証券の譲渡として出資を超えた金額に対して所得税15%、住民税5%の合計20%の納税で可能です。
有価証券の譲渡としての扱いですので、不運にも上場株式の含み損のお持ちの方は合わせて売却すれば相殺も可能となります。

②購入側の税務・融資

購入側は、出資持分の購入となります。税務的には医療法人の経費にも個人の所得にかかる経費にもなりません。将来、第3者等に譲渡する場合に購入金額を譲渡代金から控除できます。
出資持分は原則、個人(医療法で明確に個人と指定しておりませんが、都道府県に指導要綱のようです)が購入することになりますので、その資金を融資で調達したとしても利息は経費に入りません。そもそも出資持分を融資で調達するのは現実的には難しいと思われます。(融資がなかなか下りないことが第一の理由です)
したがって出資持分の購入は自己資金により調達するか、それが無理な場合は、その代償に医療法人にて新規に融資を受け、旧理事長に退職金を支払い、出資持分の譲渡代金を引き下げる方法等をとる必要があります。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q30. 「診療所を譲渡する際の書類はどのような書式になりますか?」

A.おおよそ下記の事項を記載した事業譲渡契約書を作成いたします。

事業譲渡契約書
譲渡人藤井和哉(以下、「甲」という)と
譲受人(以下、「乙」という)は、甲が経営する「藤井矯正歯科医院」の事業譲渡について、次の通り契約を締結する
(事業の譲渡)
第1条 甲は、乙に対し、藤井矯正歯科医院の事業を譲渡し、乙はこれを譲り受ける。
(事業譲渡に含む資産)
第2条 事業譲渡に含む資産は、別紙目録記載のとおりとする。(譲渡時の現況資産によります)
(労働契約)
第3条 1.甲と乙は、乙において、甲が従業員との間で締結した労働契約を一切承継しないことを確認する。
2.甲は、藤井矯正歯科医院において雇用していた全従業員を平成  年  月  日で解雇し、乙は上記従業員の中から任意のものを同年月日付で新規に雇用する。
(事業譲渡代金)
第4条 乙は甲に対し、本事業譲渡の代金として     円(消費税込み)を  日までに支払うものとする
(賃貸借契約)
第5条 甲と乙は、本事業譲渡に伴って、甲の歯科医院にかかる建物賃借権を乙に譲渡する。また、建物所有者の承諾を得たことを確認する。
(債権債務の処理)
第6条 藤井矯正歯科医院にかかる未収入金その他の債権及び未払い金、預かり金その他の債務は、すべて甲において清算するものとし、乙はこれらの債権債務は一切承継しない。
(治療中及び治療済み患者への対応)
第7条 甲が藤井矯正歯科医院において、治療中及び治療済みの患者に対して約束した、瑕疵修補及び損害賠償その他の債務にていては、甲の責任と負担で処理し、乙はこれらの債務及び責任を一切承継しない。
(競業避止)
第8条 甲は、本契約締結から2年間、藤井矯正歯科医院から半径2km以内で、歯科医院の経営に関与しないことを確約する。
(事業の引渡し)
第9条 本事業の引渡しは、平成  年  月  日とする。
(守秘義務)
第10条 甲及び乙は、本件事業譲渡契約から得られた相手方の情報を秘密として保持し、相手方の文書による承諾なくして、第3者に漏えいしない。また、患者の個人情報については、個人情報保護法等関係法令に則り、厳格に対応する。
(債務等に係る契約)
第11条 将来、乙が税務上の更正処分等を受けて納税義務その他の債務を負担することとなった場合、簿外の債務の存在が明らかになった場合、その原因が平成  年  月  日以前に存するときは、甲はその支払義務を負う。
また、平成  年  月  日時点における引継資産に架空資産があることが事後に判明した場合、甲が同額の補填を行うものとする。
(損害賠償金)
第12条 甲及び乙は相手側が正当な事由を有することなく、この契約を解除した場合については、第4条の金額の20%相当額である円を損害賠償金として請求することができる。ここで言う正当な事由とは、下記のことを言う。
①甲または乙の死亡②甲または乙の突発的な事故による重負傷③火災や地震等の自然災害による当該建築物の崩壊④乙による融資の不成立による場合⑤①から④に類する事項
(その他)
第13条 本件事業譲渡契約の成立を証して、本書2通を作成し、譲渡人及び譲受人記名押印のうえ、各1通を保有する

     平成  年  月  日
住所 東京都千代田神田神保町1-40 
甲( 譲渡人 )氏名  藤井和哉 印
住所
乙( 譲受人 )氏名       印

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q31. 「診療所を譲渡する際の税金の譲渡側の税務と購入側の税務・融資はどのようになりますか?」

A.売却側と購入側の税金は下記のようになっております。

①売却側の税務

個人診療所が売却する場合は、ユニット等の医療機器、超過収益力があるなど営業権については譲渡所得となり、また5年以上の所有であれば利益の1/2となります。
法人診療所が売却する場合は、譲渡益に対して他の利益と合算して法人税がかかります。

②購入側の税務・融資

個人診療所及び法人診療所も同じ扱いになります。営業権は、5年間で経費に入ります。医療機器ですと中古資産になりおそらく耐用年数は2年程度になるでしょうか。
また医療法人・個人診療所とも売却代金を融資で調達した場合は、借入利息は経費に入ります。
診療所の購入資金についてですが営業権に相当する金額については通常、設備資金としてではなく、運転資金として融資を受けることになりますので担保等がある場合を除いて返済期間は5年から7年くらいになると思われます。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q32. 「第3者承継の売却金額はどのくらいの金額が目安となりますか?」

A.ケースバイケースですが、金額については資産の帳簿価額+月の売上の2ヶ月から6ヶ月分程度を目安に考えればよいでしょうか。

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q33. 「第3者承継の場合に承継者から求められる事項や資料は、どのようなものがありますか?」

A.おおよそ下記のものになります。

①カルテの引継ぎは可能か。患者名簿は引き継げるか。(レセプトの使い方からデーターの移行の可否など)
②医院のシステム(診断・治療・説明・スタッフの接遇等)を引き継げる体制があるか。(旧院長のバックアップが必要です。)
③旧院長からの引継ぎ期間はあるか。
④承継時の案内状に前院長の氏名を記載できるか。
⑤なぜ売却するのか。その理由は?(病気・死亡・高齢化・医療法人の場合の院長の退職・ 移転、業績不振など理由を確認します。)
⑥診療所の賃貸借契約につき大家の了解は得られるか。家賃の金額は同額か。保証金は必要か。契約期間は?
⑦確定申告書の3年分のコピーを入手できるか。(税務資料を確認することで売上等の確認を行います。)
⑧総勘定元帳の開示は可能か。(申告書を確認することで診療所内にある資産の確認を行います。)
⑨労働者名簿・給与台帳の開示は可能か。(履歴や給与水準等の確認をします。)
⑩償却資産の申告書の3年分のコピーを入手できるか。(申告書を確認することで診療所内にある資産の確認を行います。)
⑪内装やユニットなどの医療機器はそのまま使えるか。
⑫リースの契約書・借入金の返済表のコピーの開示は可能か。
⑬従業員の継続勤務は可能か。
⑭簿外の負債があった場合は、必ず前医院の責任の下返済するようにする。
⑮開業届け・開設許可申請書の開示は可能か。
⑯医療法人の定款・社員総会議事録・取締役議事録の開示は可能か。
⑰売却側の税理士等への面会等は可能か。(特に買取り資金を融資で調達する場合は売却側の税理士等の協力が必要です。)

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る

Q34. 「相続、相続税と事業継承の難しい点はありますか?」

■事例1 診療所を所有している場合で遺産分割がまとまらない場合
              (歯科診療所を賃貸ではなく、所有している場合)

診療所の所有者及び管理者が父親のケースで診療所の遺産分割がまとまらない場合は、相続開始後の事業承継が難しくなります。
個人診療の場合は死亡に伴う管理者の変更は開業を意味します。

開業届けに相続で特別に必要な書類
診療所を所有している場合は遺産分割協議が決まった登記簿謄本
賃貸する場合は、他の相続人を賃貸人とする賃貸借契約書

遺産分割がまとまらない場合は、
所有者全員=共同相続人全員の承諾を得ていることがわかる書類 が必要になるかと思います。
原則としては、相続人全員と賃貸借契約を締結する必要がございますが、 各々の相続人の承諾書という形でも認める保健所もあるようです。
実際は争相続ではこのような書類を作成するのも難しいと思われます。

対処方法としては、
診療所を承継者である子に指定した遺言書の作成をいたします。
生前に管理者を変更し、診療所につき父と子の間で賃貸借契約を締結します。
ポイントはきちんと家賃を支払うことです。
仮に無償で借りてしまうと相続後は原則、立ち退く必要があります。
死亡後も家賃の金額等の条件は変わる可能性もありますが、 どの相続人が診療所を相続しても賃貸借契約は継続できます。
医療法人を設立し、診療所を賃借するか、買い取る形をとります。

■事例2 相続税の負担が大きく承継が難しい場合

現在の相続税
基礎控除 3000万 +600万×法定相続人の数
ただし、配偶者は法定相続分または1億6000万円までは非課税です。
首都圏では2次相続が問題となっているようです。

検討できる節税方法

 ① 小規模宅地等の軽減の利用。
 ② 医療法人の設立。
 ③ 出資持分の承継者への贈与。

①小規模宅地等の軽減

1)診療所に小規模宅地等の特例を使う
要件等
 1.遺産分割を成立させる
 2.事業承継者が相続する
 3.400㎡までは80%の評価減額が可能

2)医療法人に診療所(宅地及び建物)を賃貸している場合
要件等
 1.対象は旧医療法人(平成19年3月以前設立)のみ
 2.医療法人に宅地のみ賃貸するか、診療所(宅地及び建物)を賃貸している
 3.承継者が宅地を相続した場合は400㎡までの宅地については80%の評価減が可能

②医療法人による診療所の買取り

1.個人診療所では診療所の拡大・長期の営業努力による内部留保、言い換えれば預貯金等に対して相続税を負担する必要あり
2.相続税は毎年増加していくことになる
3. 一方、新医療法人(基金拠出型医療法人)は、拡大・長期の営業努力による内部留保には相続税がかかない
設立時の基金は債権と考えられ、医院の業績とは関係なく券面額のみを相続税の対象となりますので、相続税の負担を最小限に抑えることができます。つまり、以前の医療法人にように内部留保を通じた出資持分の価値増加に伴う相続税の負担がございません。
理由として、新医療法人は持分の定めがないこと、医院閉鎖時(解散時)の残余財産の国等への帰属、内部留保に伴う相続税の負担がないことが特徴となります。

医療法人の出資持分の価額が上昇して相続税の負担が重い場合

1.平成19年3月以前に設立された医療法人は出資持分があり、診療所の拡大や長年の営業によって出資持分の価額は上昇し、相続税は毎年増加していくことにつながります。
2. 一方、平成19年4月以降設立の持分の定めのない医療法人(以下新医療法人)は、持分の定めがないこと、医院閉鎖時(解散時)の残余財産の国等への帰属が大きな特徴で、診療所の拡大や長年の営業によって出資持分の価額は上昇し相続税は毎年増加していくことはありません
3. この出資持分のある医療法人を新医療法人への変更は可能ですが、理事の親族の占める割合、理事報酬の占める割合等、規模の規定、自由診療収入の割合を満たさない限り、莫大な贈与税が個人とみなされた医療法人の負担となり移行はかなり難しいと思われます。
4. 理事長の退任時に退職金を支払い、出資持分の評価を大幅にさげて後継者に譲渡いたします。
5. この方式をとっても多大な贈与税が算出される場合は、相続時精算課税制度を利用し贈与税の圧縮をはかります。

※相続時精算課税制度の概要
贈与者の年齢が65歳以上の場合、相続人に対する贈与税については2500万円を超えた金額の20%の納税で可能となります。

賃借している診療所が通常の売買(任意売却)ではなく競売された廃業となってしまう例

抵当権の設定後に賃貸借契約をした場合については、診療所のオーナーが融資の返済が滞った等の理由により診療所が競売の対象となった場合は、競売開始決定時に契約は終了し、その日から6ヶ月以内に立ち退く必要があります。(したがって、抵当権設定前に賃貸借契約をした場合は立ち退く必要はありません)

また、保証金は新しい貸主に引き継がれません。(旧貸主には返還を要求できますが、競売されるような状況で保証金の返還は難しいと思われます)

勿論、よくある貸主の変更は通常の売買(任意売却)の場合は、当然に賃貸借が継続され、保証金も新しい貸主に引き継がれます。

1.平成16年4月1日に民法が改正されました。短期賃借権の保護制度が廃止となりました。ただし、経過措置として平成16年4月1日以前の賃貸借契約については、競売後、残りの契約期間については賃借することが可能です。つまり次回の更新までは借りることは可能です。
また、新しい貸主に保証金の返還を求めることは可能です。

2.抵当権設定日と賃貸借の契約日が重要です

3.短期賃借権の保護を受けない抵当権設定後の契約の場合は、保証金は新しい貸主に引き継がれません

4.競売後、新しい貸主を再度、契約を結ぶことは可能ですが、あくまでも貸主との話し合いとなります(原則は立ち退きです)

よくある事例とその解決策(矯正歯科診療所の事業承継編)に戻る